研究課題/領域番号 |
21K15622
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤岡 祐介 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (70896381)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プレオトロピン / ALS/FTLD / グリア細胞 / FUS |
研究実績の概要 |
ALS/FTLDの病初期にみられるグリア細胞の神経保護効果を維持、活用するという独自の治療戦略の有用性を示すため、十分量のプレオトロピンを変性神経細胞周囲に供給させる方法として①リコンビナント-プレオトロピンの補充(定期的髄腔内投与)を検証した。プレオトロピンはグリア細胞におけるFUSの機能喪失等ALS/FTLD病態の進展に即応して分泌される生理的かつ強力な神経栄養因子であるため、これまでの神経栄養因子補充療法に比べて高い効果が期待される。 初年度であるR3年度においては、まずリコンビナント-プレオトロピンの髄腔内/脳室内投与が技術的に可能であることを検証するために、GFPを発現可能なAAVを投与し各組織への分布を確認した。またリコンビナント-プレオトロピン製剤投与に際し副作用の出現を確認するため、野生型マウスに投与後、血液検査や各種臓器の病理学的検討も行い、特筆すべき副作用が見られないことを確認した。 次いで、複数のALS/FTLDマウスモデル(FUS conditional knockout(CKO)マウスモデル、変異SOD1家族性ALSモデルマウスおよびTDP-43 CKOマウスモデル、TDP-43 BAC Tgマウスモデル)を用意した。投与開始時期、投与回数、用量の妥当性を検討するためにFUS CKOマウスモデルを用い投与を開始した。生存率、運動機能検査、高架式十字試験やオープンフィールド試験を行い治療効果の判定を遂行中である。 次年度以降、他モデルマウスにおける有用性を確認するとともに、経時的な病理学的検査を施行する。さらに②AAV投与によるグリア細胞の賦活による神経保護効果の検証を並行して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずリコンビナント-プレオトロピン製剤の投与に関して、技術的な問題、副作用の特段の問題が生じなかったことが挙げられる。また治療計画作成の前段階である投与開始時期、投与回数、用量の妥当性を検討に着手でき、結果が示されつつある点も評価できるものと考える。今後対象のモデルマウスを広げるにあたってモデルマウスの用意に目途が立った点も今後の研究計画進展に障害とならないものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、本年度の基礎的検討をベースに①リコンビナント-プレオトロピンの補充(定期的髄腔内投与)の具体的な治療効果の判定、より詳細な病理学的検討、MRIによる検討に着手する予定である。さらに、モデルマウスの種類を増やすことで、普遍的な効果を証明することを目指す。 またもう1つの治療戦略としての②グリア細胞の神経保護効果の賦活の検討に着手する予定である。賦活の方法として -1) AAVを用いグリア細胞のFUSを発現抑制しプレオトロピンを持続的に分泌させる。-2) AAVを用いグリア細胞のプレオトロピンを過剰発現させ持続的に分泌させる。という2方法を検討しているが、次年度はまず-1)へ着手し、リコンビナント製剤投与時と同様の効果実証を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルマウスの作出を行ったのちに伝染病への罹患が判明したため想定以上に時間を要したことから、一部のリコンビナント製剤の投与実験開始が翌年度となった。そのため予定していたマウス飼育費、リコンビナント製剤購入資金を次年度使用額として繰り越す必要が生じた。計画通りモデルマウス作出に目途がたったため、次年度において必要薬剤購入等を計画している。
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