研究課題
【背景・目的】敗血症では、宿主の免疫反応亢進の影響が中枢神経系にも波及し敗血症性脳症を合併することはよく知られているが、脊髄についてはほとんど報 告されていない。本研究では敗血症時の脊髄に発生する 変化およびその変化が脊髄機能に及ぼす長期的な影響を、敗血症マウスモデルを用いて明らかにするこ とを目的とする。【方法】敗血症モデルマウス (LPS 腹腔内投与、盲腸結紮穿刺)を作成した。脊髄における炎症性サイトカインIL-1β、IL-6、TNF-αの誘導に加えて、LPSモデル において、脊髄内におけるIL36gamma、COX-2の誘導を解析した。 【結果】LPS腹腔内投与モデルにおいて、脊髄におけるIL36gammaの有意な誘導は認めなかった。一方,脊髄におけるCOX-2はLPS腹腔内投与マウスにおいて著明な 誘導を認めた。【考察】これまでに得られた知見(① 2種類の敗血症モデルマウス (LPS腹腔内投与、盲腸結紮穿刺)において共通して、脊髄にIL-1β、IL-6、TNF-αの著明な誘 導を認めた。② 敗血症誘導24時間後に、脊髄 (特に下部胸髄)の著明な浮腫及び神経細胞の阻血性変化を認めたが、組織学的には末梢由来の炎症性細胞の脊髄内へ の浸潤は認めなかった。③ 敗血症誘導24時間後に、脊髄ミクログリア数の増加および活性型への形態変化をきたしていた)に加え、今回得られた結果は、敗血症に よって脊髄内で生じる炎症性変化が、末梢からの炎症波及ではなく脊髄内で生じている可能性を示唆する結果であった。以上の結果を、PLoS One.に投稿し、受理された。(PLoS One. 2022 Jun 13;17(6):e0269924.)
2: おおむね順調に進展している
論文発表が可能になった。一方、行動解析については、長期での飼育が必要なこと、頭数が必要であることよりやや進捗としては遅延しているものの、想定の範囲内では経過していると考える。
2023年度は敗血症モデルマウスの行動解析について、より変化を捉えられる条件設定で運動機能や知覚機能を主に解析する。これにより、脊髄機能をより反映することが可能になると思われる。薬物的介入による組織学的変化の改善と、機能変化の改善が可能か、また、組織学的所見と機能所見の間に相関性を認めるか、を検討する方針である。
本年度は、論文の執筆を主に行ったこと及び、コロナ禍により出張が制限されたために、物品・旅費に計上する費用がかからなかった。次年度については、実験系を遂行するために物品等の費用がかかると考えている。
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PLoS One. 2022 Jun 13;17(6):e0269924.
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