研究課題/領域番号 |
21K15625
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣津 聡子 京都大学, 医学研究科, 助教 (90886186)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 敗血症 / 脊髄 / 敗血症性脊髄症 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
【背景・目的】敗血症では、宿主の免疫反応亢進の影響が中枢神経系にも波及し敗血症性脳症を合併することはよく知られているが、脊髄についてはほとんど報 告されていない。本研究では敗血症時の脊髄に発生する 変化およびその変化が脊髄機能に及ぼす長期的な影響を、敗血症マウスモデルを用いて明らかにするこ とを目的とする。 【方法】敗血症モデルマウス (LPS 腹腔内投与、盲腸結紮穿刺)を作成した。脊髄における炎症性サイトカインIL-1β、IL-6、TNF-αの誘導に加えて、LPSモデル において、脊髄内におけるIL36gamma、COX-2の誘導を解析した。 【結果】LPS腹腔内投与モデルにおいて、脊髄におけるIL36gammaの有意な誘導は認めなかっ た。一方,脊髄におけるCOX-2はLPS腹腔内投与マウスにおいて著明な 誘導を認めた。 【考察】これまでに得られた知見(1 2種類の敗血症モデルマウス (LPS腹腔内投与、盲腸結紮穿刺)において共通して、脊髄にIL-1β、IL-6、TNF-αの著明な誘 導を認めた。2 敗血症誘導24時間後に、脊髄 (特に下部胸髄)の著明な浮腫及び神経細胞の阻血性変化を認めたが、組織学的には末梢由来の炎症性細胞の脊髄内 へ の浸潤は認めなかった。3 敗血症誘導24時間後に、脊髄ミクログリア数の増加および活性型への形態変化をきたしていた)に加え、今回得られた結果は、敗 血症に よって脊髄内で生じる炎症性変化が、末梢からの炎症波及ではなく脊髄内で生じている可能性を示唆する結果であった。以上の結果を、PLoS One.に投稿 し、受理された。(PLoS One. 2022 Jun 13;17(6):e0269924.)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文発表は完了できた。 長期飼育の必要性および、脊髄の機能検索が難しいことより、行動解析の進捗は遅延している。 産休取得により、課題延長申請中である。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は前年度、産休取得によりできなかった、敗血症モデルマウスの行動解析について、より変化を捉えられる条件設定で運動機能や知覚機能を主に解析する。 これにより、脊髄機能をより反映することが可能になると思われる。 薬物的介入による組織学的変化の改善と、機能変化の改善が可能か、また、組織学的所見と機能所見の間に相関性を認めるか、を検討する方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
産休取得に伴い、実験および出張が制限されたために、物品・旅費に計上する費用がかからなかった。 次年度については、実験系を遂行するための物品等の費用がかかると考えている。
|