研究実績の概要 |
若年性パーキンソン病の原因遺伝子産物PINK1とParkinはマイトファジーに関与し,その異常がドパミン神経(DN)の脱落を導くと考えられている.ところが,加齢を伴う不良ミトコンドリアの蓄積では,若年発症理由を説明できない.そこで申請者は,胎生期のアストロサイト発生にPINK1, Parkinを介した生理的マイトファジーの関与の可能性を見出し、若年性発症解明を目指している. 近年,大脳皮質や海馬において,アストロサイトの多様性とそれらの発生様式が解明されている一方で,中脳における調査は遅れている.申請者は,まず,中脳発生期におけるアストロサイトの発生様式を,DNとのかかわりに焦点を置いて調べ,第44回分子生物学会にて,タイトル“中脳ドパミン神経を取り巻くアストロサイトの発生様式”でポスター発表した.発生後期と新生児マウス中脳分化領域のアストロサイトを,分化マーカーで標識し,その分布を光シート顕微鏡と共焦点顕微鏡にて観察した.さらに,DN分化マーカーにて標識し,アストロサイトの分布と比較した.結果,中脳発生期において,アストロサイトはマーカーの違いで複数種類に分けられ,それぞれ特有の分布を示し,DNの配置との関連があることが分かった. それらとマイトファジーの関わりを知るため,マイトファジー可視化マウスの凍結切片を,DNとアストロサイトの分化マーカー11種類にて染色し,unmix機能を駆使して,マイトファジーシグナルの位置を特定した.結果,E17,5 P0中脳分化領域において,領域特異な生理的マイトファジーを確認し,アストロサイトの各発生段階に生理的マイトファジーが関わる可能性が予想できた.結果の一部を“中脳発達期におけるアストロサイトの生理的マイトファジー~パーキンソン病の観点から”にてまとめ,第63回日本神経学会に採用された.
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