研究課題/領域番号 |
21K15635
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
漆畑 拓弥 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 博士研究員 (40847670)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二光子顕微鏡 / 認知症 / 神経ネットワーク / in vivoイメージング |
研究実績の概要 |
脳におけるニューロンの回路形成や情報処理について理解することは、認知症などの脳疾患による神経回路破綻のメカニズムを理解するうえで重要である。本研究では脳の領野内及び領野間における単一細胞レベルの神経ネットワーク機能を評価するために、記憶・学習試験を行ったマウスに対して、広視野型2光子レーザー顕微鏡を使用したカルシウムイメージングを実施し、マウスの大脳皮質における数千~数万個のニューロンの活動を同時に記録した。また、麻酔は神経活動を大きく混乱させ、正しい神経活動の評価を妨げるため、覚醒状態のマウスを使用して神経活動計測が実施された。測定された神経活動のデータを用いて、記憶形成前後における神経ネットワークの変化を捉えるための神経ネットワーク評価手法の開発を行った。開発された機械学習技術を使用した神経ネットワーク評価手法では、ニューロン間における活動の関係性が解読され、この関係性が記憶形成に伴いどのように変化するか評価が行われた。この評価により特定の領野内及び特定領野間における記憶形成前後の神経ネットワークの変化を捉えることができた。これまでの脳神経機能研究では単一細胞レベルの空間分解能で神経ネットワークの機能及びその変化を評価する系は実現されていないため、この評価系は脳疾患研究における脳機能障害の理解や治療法開発だけでなく、基礎神経科学における神経回路の解読や制御などにも役立つことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初の予定では本研究はバーチャルリアリティ(VR)行動実験システムを使用した記憶・学習試験を行う予定だったが、VR行動実験システムを使用した行動実験系の立ち上げに時間がかかってしまっているため、計画段階で考えられていた次善策である一般的な恐怖条件付け学習によりマウスの記憶形成を行うこととした。今回開発した神経ネットワーク評価手法はVR行動実験系が立ち上がり次第適応可能であるため、大きな後れにはならないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、認知症モデルマウスで同様の測定を実施し、健常マウスとの比較を行うことで、認知機能障害の根底にある神経ネットワーク障害のメカニズムを調査する。
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