研究課題/領域番号 |
21K15636
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
清水 英雄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, リサーチフェロー (70812212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハンチントン病 / シナプス関連タンパク質 / シナプトポディン |
研究実績の概要 |
本研究は、ハンチントン病における脳発達過程で起きるシナプス形成異常と、それに関連する興奮毒性に対する神経細胞の脆弱性の差を明らかにすることである。そこで、ハンチントン病モデルマウスであるR6/2マウスの卵巣を移植したB6CBAF1雌マウスとB6CBAF1雄マウスを掛け合わせて、生まれた新生仔マウスの大脳皮質を個体毎にトリプシン処理で解離してポリ-L-リジンコートプレートに播種した。播種後に由来となった仔マウスの遺伝子型を判定することで、ハンチントン病モデルマウスの培養神経細胞を同定した。この系は、同腹のR6/2と野生型がほぼ同じ確率で誕生するため、同腹の仔マウスから個別に初代培養細胞を作製して同時に解析することで、遺伝子型以外の条件をすべて同一に揃えて解析を行うことができる。生後1日齢のマウスから作製した初代培養神経細胞を播種後21日目まで培養し、ウェスタンブロッティングでシナプス関連タンパク質の一つであるシナプトポディンの量を野生型とモデルマウス間で比較した。その結果、モデルマウス由来の培養神経細胞では、シナプトポディンの量が少なかった。また、リアルタイムPCRを用いて、シナプトポディンのmRNA量を調べたところ、mRNAには差は見られなかった。このことから、ハンチントン病モデルマウスの神経細胞では、シナプトポディンのmRNAの翻訳、もしくは、合成したタンパク質の分解に異常が生じている可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、卵巣移植した親マウスから生まれた仔マウスを用いて初代培養神経細胞を作製するのだが、胎仔を用いるのとは異なり、仔マウスが生まれてからの経過時間に応じて、培養21日目での培養細胞の性質に差が出てしまうことがわかった。そのため、培養のロット間の差が大きく、安定した結果を出すのが難しい。上記の理由で、研究計画より遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
ハンチントン病モデルマウスは寿命が短く、行動異常も見られる。安定した繁殖のためには、モデルマウスから卵巣移植をした親マウスを用いる。安定したクオリティの培養細胞を作製するためには、生後の経過時間をある程度揃える必要がある。そのため、卵巣移植したマウスを増やして、繁殖個体を多くすることで、培養の機会を増やして、遅れに対応していく。モデルマウス由来の培養神経細胞ではシナプトポディンの量が少なかったことから、他のシナプス関連タンパク質にも異常が見られる可能性が高い。ポストシナプスタンパク質PSD95、プレシナプスタンパク質シナプシン1をはじめとしたシナプス関連タンパク質についてタンパク質量、mRNA量を調べて、ハンチントン病の発達期におけるシナプス異常について明らかにしていく。
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