研究課題
【背景と目的】日本人を含む東アジアに多いインフルエンザ脳症(IAE)のうち高度脳浮腫を呈し予後の悪い重症型の病態を解明し治療法を開発するのが本研究の目的である。IAEの原因究明のために最も着目したいウイルス感染後数日間の病態は、IAEが超急性の経過をたどるためアプローチが難しくいまだ不明である。本研究ではウイルス投与により作製したIAEモデル動物を利用して、ウイルス感染後から高度脳浮腫に至るまでのウイルス動態、それに関与する細胞、病態を探る。さらにそれを臨床に還元し、患者autopsy脳や検討を行い、新たな知見と治療法への着想を得た。【方法と結果】3週齢のC57BL/6マウスに量とルートを調整して、A型インフルエンザウイルスを投与し時系列で観察したところ、ウイルス投与後48時間以降より脳浮腫と神経学的所見を呈した。組織学的には、びまん性脳浮腫、微小血栓・出血、血管透過性亢進、clasmatodendrosis等を認め、ウイルス蛋白を脳血管内皮細胞(EC)やアストロサイトに認めた。これらはIAE脳症患者脳でも同様であった。ヒトECやアストロサイト由来細胞へのインフルエンザウイルス感染は細胞死を誘導し、細胞内にウイルス蛋白を検出したが、インフルエンザウイルスの増殖自体はこれらの細胞ではほとんど見られなかった。EC由来細胞とウイルス感染マウスへの抗インフルエンザ薬による介入試験では、両方に有効であったのはRNA転写と蛋白翻訳に効果がある薬剤のみであった。【考察】脳ECへのウイルスの直接感染はインフルエンザ関連脳症の発症の引き金となる。インフルエンザ関連脳症の発症において、ウイルスの直接感染とRNA転写や翻訳は必須であるが、ウイルスの増殖は必ずしも必要ではなかった。
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