研究課題/領域番号 |
21K15641
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
亀田 貴寛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80758558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HDL / 高比重リポタンパク / コレステロール引き抜き能 / リポソーム結合ゲルビーズ / コレステロール逆転送 / 粥状動脈硬化症 / 蛍光標識コレステロール / myeloperoxidase |
研究実績の概要 |
動脈硬化性疾患の予防に血中のリポ蛋白コレステロールの管理が社会的にも求められている。しかし、基準範囲にも関わらず心血管イベントを引き起こす残余リスクの存在が新たに注目され、現在、リポ蛋白をターゲットにした治療・予防戦略は「量から質」への転換期を迎えている。HDLが担う動脈硬化に対する多彩な機能として、マクロファージなどの末梢細胞からのコレステロール引き抜き能(CEC)、抗酸化能、抗炎症作用、内皮機能保護作用、抗血栓作用などが示されている。特にCECはHDLコレステロールより優れた心血管疾患のリスクマーカーとして世界的に期待されている。一方で、HDLは病態や炎症によって化学的修飾を受けることが知られており、我々はMyeloperoxidaseによる酸化修飾がHDLの一部の抗動脈硬化機能を減弱させることを報告した。また、先に示したCECを測定することは粥状動脈硬化による心血管疾患のリスク評価に特に有用であると期待されている。我々は蛍光標識コレステロールを用いた固相化リポソーム結合ゲルビーズ(immobilized liposome-bound gel beads;ILG)法によるCEC測定法を確立した。測定法の検証において、本法は検体中のビリルビンによる影響を受けることを確認した。よって、より良好な測定系の確立のため、ビリルビンの影響を回避する測定条件について検討した。担体への蛍光標識コレステロール量を増やすことでCEC測定におけるビリルビンの影響を軽減できることが示唆された。さらに検体試薬容量比なども改善することで、本CEC測定技術がさらなる臨床応用可能なフェーズへ進むと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の研究手法におけるHDLのCEC測定は、臨床検査への直接の応用は極めて困難である。この従来法は、「細胞の使用、放射性同位体の使用、手技が煩雑、装置化が困難」という問題点をもつ。さらにCEC評価の結果は、細胞による培養条件や個体差によって複雑化する。培養細胞に代わるCEC測定法の構築は、先行研究でのリポソームを担体へ固定化する手法の確立により革新的に前進した。従来法との比較検討から、ILGが培養細胞に代わるコレステロールドナーとして有効であることを確認した。また、本測定法は従来法に比べ、再現性において特に優れており、臨床検査への応用への有効性を報告してきた。今回、臨床検体の測定における共存物質の影響について、ビリルビンによる正誤差の存在を確認したが、測定条件の改良によってその影響を軽減することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではすでに、ILG法によるHDLのCEC測定のサンプルとして、超遠心法で分離したHDLと、apoB関連リポ蛋白除去血清(BDS)を用いてきた。今後はHDL以外のリポ蛋白や血中マトリックスの影響を確認するため、超遠心法で得たカイロミクロン、超低比重リポ蛋白(VLDL)、LDLやアルブミンをはじめとする種々の成分を添加調整したサンプルを測定し、リポ蛋白間の相互作用や血中マトリックスの影響を解析する。また、血中のコレステロールの総体的な収容能力としてのトータルネットCECが評価可能であるかを検討する。トータルネットCECの測定試料として血清、全血、血漿が測定可能であるかを検討する。併行して、固層化リポソーム結合ゲルビーズの調整法や反応条件の検討を通じて、試料にあわせた測定条件の改良を引き続き行う。
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