研究課題
動脈硬化性疾患の予防に血中のリポ蛋白コレステロールの管理が社会的にも求められている。しかし、基準範囲にも関わらず心血管イベントを引き起こす残余リスクの存在が新たに注目され、現在、リポ蛋白をターゲットにした治療・予防戦略は「量から質」への転換期を迎えている。HDLが担う動脈硬化に対する多彩な機能として、マクロファージなどの末梢細胞からのコレステロール引き抜き能(CEC)、抗酸化能、抗炎症作用、内皮機能保護作用、抗血栓作用などが示されている。特にCECはHDLコレステロールより優れた心血管疾患のリスクマーカーとして世界的に期待されている。一方で、HDLは病態や炎症によって化学的修飾を受けることが知られており、我々はMyeloperoxidaseによる酸化修飾がHDLの一部の抗動脈硬化機能を減弱させることを報告した。これらのリポタンパクの修飾の影響と並行して、そのCECを測定することは粥状動脈硬化による心血管疾患のリスク評価に特に有用であると期待されている。我々は蛍光標識コレステロールを用いた固相化リポソーム結合ゲルビーズ(immobilized liposome-bound gel beads;ILG)法によるCEC測定法を確立した。ILG法は臨床現場で実施可能であるが、ビリルビンがCEC値に正の誤差をもたらすことが明らかになった。ILG法の測定波長域の設定でビリルビンが蛍光を発することがわかった。励起波長を変更することで、ビリルビンによる陽性誤差を約70%改善することができた。さらに、ビリルビンオキシダーゼを利用することで、CECの偽高値を約80%改善することができた。蛍光標識コレステロールを用いたCEC測定においてビリルビンの影響を回避することで、ILG法を用いたCEC評価の改善に成功した。
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