研究実績の概要 |
【目的】microRNA(以下,miRNA)は,遺伝子発現調節において重要な役割を有し,癌・免疫系など様々な疾患の発症・悪性化,転移との間に密接な関連が明らかにされつつある.今回,我々は前癌病変としての腺腫を含む早期大腸癌のESD標本を用いて早期大腸癌のバイオマーカーとなりうる新規miRNAの探索および上皮間葉転換(EMT)に関与するmiRNAを同定することを目的とした. 【方法】大腸腫瘍のESD15例の検体から腫瘍部,非腫瘍部を採取し,miRNAに関する基礎的検討を行った(香川大学倫理承認,承認番号H22-063).上記の腫瘍部,非腫瘍部からtotal RNAを抽出し,2555種類のmiRNAをアレイを用いて網羅的に解析.arrayで有意な変化を示したmiRNAをreal-time PCRで検証.有意な変化を示したmiR-452-5pを大腸癌細胞株にトランスフェクトし,増殖,EMTへの影響を検証した. 【結果】腫瘍部・非腫瘍部のmiRNAの比較では,両者間に異なったクラスターを形成した.有意に増加したmiRNAを11分子,減少したmiRNAを15分子検出.この内miR-452-5pは大腸癌細胞株にトランスフェクトすることにより,その増殖を促進させた.一方 MiR-452-5pは,大腸癌細胞株のEMTを抑制し,CRC細胞の浸潤にネガティブな影響を与えることが判明した.関連するタンパクをウェスタンブロッティングで検討したところMiR-452-5pは,ERK経路の活性化による細胞増殖の促進,Slugの抑制によるEMTの抑制に関与している可能性が示唆された. 【結論】早期大腸癌の新規バイオマーカーの候補となるmiRNAを同定した.MiR-452-5pは増殖,EMTのキーとなる分子である可能性が示唆され,その経路としてはERK経路の活性化,Slugの抑制が関与していると考えられた.
|