研究課題/領域番号 |
21K15648
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松田 やよい 九州大学, 大学病院, 助教 (70721009)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 副腎皮質網状層 / DHEA / CYB5A / マイクロダイセクション |
研究実績の概要 |
副腎は皮質と髄質より構成され、副腎皮質は形態的にも機能的にもユニークな3層構造を呈する。副腎アンドロwpは主に網状層で合成されるステロイドホルモンである。中でもデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は性ホルモン前駆体として作用し、血液循環中で最も豊富なステロイドホルモンであり、近年の観察研究のエビデンスから老化現象との関連が着目されている。一方で、代表的な動物モデルあるマウスでは網状層を有さないため基礎研究からの副腎アンドロゲン研究の進捗が十分でなく、ホルモン合成および血中での代謝機構について依然不明な点が多く、ヒト臨床検体を用いた成因解明が必須である。本研究では、副腎疾患および類縁疾患の血液、組織検体を用いて、ゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノムおよびメタボローム解析によるマルチオミクス解析に基づきヒトにおける、副腎網状層の老化機構を解明する。さらに、独自に開発した網羅的ステロイド測定法である血中ステロイドミクスに機械学習を応用することで、副腎アンドロゲンに基づく老年者における心血管代謝および筋・骨格系疾患リスク評価モデルを構築する。 チトクロームb5(CYB5A)は副腎皮質網状層におけるDHEA生産に必要なステロイド合成酵素である。まず正常副腎皮質網状層における年齢・性差の影響を検討するため、褐色細胞腫5例(若年2例、高齢3例)の腫瘍組織を用いてCYB5Aを染色した。その結果、高齢になるにつれてCYB5A染色領域が減少しており、加齢により副腎皮質網状層の機能が低下することを示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チトクロームb5(CYB5A)は副腎皮質網状層におけるDHEA生産に必要なステロイド合成酵素である。まず正常副腎皮質網状層における年齢・性差の影響を検討するため、褐色細胞腫5例(若年2例、高齢3例)の腫瘍組織を用いてCYB5Aを染色した。その結果、高齢になるにつれてCYB5A染色領域が減少しており、加齢により副腎皮質網状層の機能が低下することが示唆された。さらに、新たに褐色細胞腫および非機能性腺腫計9例の腫瘍組織におけるでCYB5A染色を準備中である。染色に時間を要しており、副腎疾患およびその類縁疾患患者の血液検体のメタボローム解析と腫瘍組織の統合オミクス解析(トランスクリプトーム解析・遺伝子解析)にはまだ着手できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
腫瘍組織におけるCYB5A染色済および今後染色予定の14例において、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションシステムによりCYB5A染色領域および非染色領域より試料を採取する。さらに、近年、遺伝子操作マウスを用いた検討により、球状層の維持にはWnt/β-cateninの活性化、束状層の維持にはcAMP/PKAの活性化が必須であることが報告されているが、網状層においては明らかでないため、パスウェイ解析により層維持機構を解明する。また、動物モデルでは副腎皮質の細胞回転は、幹細胞は球状層に由来し外側から内側に向けて増殖、分化することが示唆されているが (centripetal 説) 、ヒトにおいては未解明である。そのため、皮質3層由来の試料を用いた全ゲノム解析により、ヒトにおける皮質3層の細胞系譜の流れを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は副腎疾患およびその類縁疾患患者の血液検体のメタボローム解析と腫瘍組織の統合オミクス解析(トランスクリプトーム解析・遺伝子解析)に着手できていないため、 これらを解析するための消耗品を次年度に使用する。
|