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2023 年度 実施状況報告書

副腎皮質網状層に着目した老化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15648
研究機関九州大学

研究代表者

松田 やよい  九州大学, 大学病院, 助教 (70721009)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード網状層 / 老化 / 束状層 / 球状層 / WNT/β-catenin signaling / activator protein-1
研究実績の概要

副腎皮質は、アルドステロンを合成する球状層、コルチゾールを合成する束状層、副腎アンドロゲンを合成する網状層の3層構造を有する。副腎アンドロゲンの中でも、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は性ホルモン前駆体として作用し、近年の観察研究の結果から老化現象との関連が注目されている。一方で、代表的な動物モデルであるマウスは網状層を有さないため基礎研究からの副腎アンドロゲン研究の進捗が十分でなく、ホルモン合成および血中での代謝機構について依然不明な点が多い。本研究の目的は、ヒトにおける副腎網状層の老化機構を解明するとともに、副腎アンドロゲンに基づく、老年者における心血管代謝および筋・骨格系疾患リスク評価モデルを構築することである。
褐色細胞腫または非機能性副腎皮質腫瘍の手術で得られた、若齢1例・高齢2例の付随正常副腎をサンプルとしてシングルセル解析を行い、副腎皮質細胞17322 cellsを同定した(若齢 4366, 高齢 12956 cells)。若齢・高齢間の遺伝子発現変動を皮質の層毎に検討すると、球状層・網状層において、コルチゾール合成へのシフトが示唆された。球状層では、層構造維持に重要なWNT/β-catenin signalingに関わる遺伝子の発現が低下していた。一方、束状層では、炎症や老化に関連した遺伝子、またactivator protein-1 (AP-1) により制御される遺伝子の発現が上昇していた。
空間トランスクリプトーム解析により構造変化を定量化したところ、高齢では3層ともに非連続的になることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、公共データベース(GTEx)副腎皮質のRNA-seqデータ(若齢163例、高齢69例)を用いて副腎皮質全体での遺伝子発現変化を比較したところ、高齢ではコルチゾール合成亢進、アンドロゲン合成低下が示され、炎症・免疫応答、細胞老化に関連した遺伝子発現が上昇していた。
次に、褐色細胞腫または非機能性副腎皮質腫瘍の手術で得られた、若齢1例・高齢2例の付随正常副腎をサンプルとしてシングルセル解析を行い、副腎皮質細胞17322 cellsを同定した(若齢 4366, 高齢 12956 cells)。若齢・高齢間の遺伝子発現変動を皮質の層毎に検討すると、球状層・網状層において、コルチゾール合成へのシフトが示唆された。球状層では、層構造形質維持に重要なWNT/β-catenin signalingに関わる遺伝子の発現が低下していた。一方、束状層では、炎症や老化に関連した遺伝子、またactivator protein-1 (AP-1) により制御される遺伝子の発現が上昇していた。
空間トランスクリプトーム解析により構造変化を定量化したところ、高齢では3層ともに非連続的になることが示された。
本研究結果から、副腎皮質の加齢性変化には、層構造の形成に重要と考えられているWNT/β-catenin signalingの変化や、おそらく加齢に伴うと考えられる組織の慢性炎症や細胞老化、またそれらに関連しているAP-1の活性化など、様々なシグナリング異常が関与していることが示唆された。
上記の結果をもとに、in silicoで遺伝子摂動実験を行い、加齢による副腎皮質の変化が再現されることを確認した。具体的には、WNT/β-catenin signalingの減弱およびAP-1の活性化により、球状層・網状層の減少と束状層の増加が再現されることを確認した。

今後の研究の推進方策

本研究の結果を論文報告予定である。

次年度使用額が生じた理由

メタボローム解析関連の経費が当初の予算より低価であったため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ヒト副腎皮質加齢性変化のシングルセル・空間的遺伝子発現解析2023

    • 著者名/発表者名
      岩橋 徳英
    • 学会等名
      第96回日本内分泌学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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