女性では閉経後にサルコペニアが増えることが報告されており、エストロゲン低下とAT1受容体連関およびサルコペニアへの影響ついての検討を行った。 動物実験ではC57BL6マウスを用い、卵巣摘除術を行なった閉経モデルマウスを作成し、sham手術群と比較した。閉経モデルマウスでは腓腹筋、ヒラメ筋の筋肉量の低下を認めた。また、ミオシ重鎖(MHC)の発現低下を認め、骨格筋の分化能の低下が示唆された。 培養細胞実験では、骨格筋芽細胞を用い、17β-エストラジオールを投与した群(E2+)と非投与群(E2-)に分け実験を行なった。E2-ではE2+に比べMHCの発現低下を認め、分化能の低下が示唆された。また、免疫組織化学染色ではE2+ではLAMP2とTOMM20の共局在の増加を認め、エストロゲンは骨格筋においてマイトファジーを誘導することが示唆された。さらに、JC-1染色、TMRE染色、Mitosox red染色の結果よりE2-ではミトコンドリア機能低下及びROSの増加を認めた。また、WesternblotではE2+群でRab9の減少を認め、また免疫組織化学染色においてもE2-群ではLAMP2とRab9の共局在の減少を認めた。以上より、エストロゲンは、Rab9依存性オルタナティブオートファジーを誘導し、マイトファジーを介してミトコンドリアの機能を維持し、骨格筋分化能を維持することにより骨格筋萎縮に対して保護的に働くことが示唆された。 これまでの結果から、脂質異常症、糖尿病、閉経はマウスにおいて、血管老化の進展、骨格筋重量減少、また骨格筋の分化能低下を認めた。細胞レベルにおいてもオートファジー発現抑制によるミトコンドリア機能低下を認め、さらに細胞老化、骨格筋分化抑制を認めた。一方、ARB投与により機能は維持されていたことから、この機序が老年症候群の治療ターゲットになることが示唆された。
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