研究実績の概要 |
1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG) はヒト体内に存在するグルコースアナログの1つである。臨床で血糖コントロールの指標として測定されているが、1,5-AGの体内での役割に関する報告は少なく未だ不明な点が多い。本研究では①エネルギー代謝における「1,5-AGの生理学的役割」、②加齢による「1,5-AG代謝の変化」を明らかにすることを最終目的とする。令和三年度は、①エネルギー代謝における「1,5-AGの生理学的役割」を解析するため、血中1,5-AG高濃度モデル動物を作成した。1,5-AGを7日間持続皮下投与したモデルでは、投与量依存的な血中1,5-AG濃度の増加を認めた。本モデル動物で随時の血糖値および血中インスリン値を評価した。さらに、投与7日目に肝臓と腎臓を摘出し、エネルギー代謝に関連する遺伝子のmRNAをリアルタイムPCRにて定量的に評価した。コントロールに比して血中1,5-AG高濃度モデル動物で有意な変化を有する遺伝子を認めたことから、1,5-AGがエネルギー代謝に関与している可能性が推察された。リアルタイムPCRにて検出されたmRNAの増減がタンパク発現量および機能にも影響しているか検討するため、ウエスタンブロッティングおよび機能評価法の構築を進めている。また、②加齢による「1,5-AG代謝の変化」を評価するため、高齢モデルを作成中であり、最終的な検討を行うべく準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル動物の臓器からmRNAを抽出し定量する工程において、再現性のあるデータを得るために、臓器の摘出・mRNA抽出の手技確立およびプライマー設計を行った。これにより、1,5-AG投与モデル動物における遺伝子変化を評価できた。また、血中1,5-AGの測定方法を基に臓器中の1,5-AG濃度を測定するべく測定条件の検討を行い、来年度の準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和四年度は、7日間持続皮下投与したモデルで得られたmRNA量の変化がタンパク量及び機能に影響しているか検討するため、摘出臓器を用いてウエスタンブロッティングによるタンパク発現量の評価とタンパク機能評価を行う。さらに、肝臓および腎臓の培養細胞に1,5-AGを添加し、in vivoで見られた変化がin vitroでも見られるか検討する。また、飼育中の高齢モデル動物が適正週齢に達したら、1,5-AGを持続皮下投与し、週齢別に1,5-AGの体内動態を評価する。
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