研究実績の概要 |
臨床現場において1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)は血糖コントロールの指標として測定されている。しかしながら、体内での1,5-AGの役割に関する報告は少なく、未だ不明な点が多い。本研究では、①エネルギー代謝における「1,5-AGの生理学的役割」、②加齢による「1,5-AG代謝の変化」を明らかにすることを最終目的とする。ヒトでは血中1,5-AG濃度が加齢によって減少することが報告されている。そこで48週齢以上の高齢マウスを作成し、成熟マウスと高齢マウスの血中1,5-AG濃度を測定した。成熟マウス(8週齢)と高齢マウス(48週齢以上)の血中1,5-AG濃度はどちらも血糖コントロールに異常のないヒトの血中1,5-AG濃度より低く、かつ加齢に伴う有意な血中1,5-AGの減少を認めなかった。令和5年度は高齢マウスを用いた実験を主に行った。まず、①エネルギー代謝における「1,5-AGの生理学的役割」を解析するため、高齢マウス(60週齢)に1,5-AGを28日間持続皮下投与した。同モデルから摘出した肝臓と腎臓を用いて、エネルギー代謝関係の遺伝子を始め、炎症や酸化ストレス関係の様々な遺伝子発現の変化をリアルタイムPCRにて定量的に評価した。リアルタイムPCRにて検出されたmRNAの増減が各臓器の機能にも影響しているか検討するため、機能評価も行った。また、②加齢による「1,5-AG代謝の変化」の解析を行うため、1,5-AGを長期投与した成熟マウスと高齢マウスの臓器内の1,5-AG蓄積量をそれぞれ測定するため、破砕した臓器中の1,5-AG測定を進めている。
|