研究課題
感冒や肺炎などの呼吸器感染症に対して処方される漢方方剤は複数ある。麻黄湯の抗ウイルス作用や免疫賦活作用など詳細な作用機序が明らかになる一方、多くの漢方方剤の分子作用機序については未解明な部分が多い。当該年度は、漢方方剤のヒト由来細胞に対する作用を明らかにするため、ヒト肺上皮系の培養細胞を漢方方剤で刺激し、細胞生存率の測定ならびにサイトカイン産生を測定した。本研究では呼吸器感染症に対して処方例の多い11種の漢方方剤を用いたが、いずれの漢方方剤でも細胞生存率の顕著な低下は認められなかった。また、対照と比較してIL-6の産生性が亢進する漢方方剤は確認されなかった。薬剤耐性肺炎球菌に対しても漢方方剤が発育阻止作用を示すのかを明らかにするため、薬剤耐性が確認されている臨床分離株を用いて各種漢方方剤の阻止円形成能を測定した。これより、肺炎球菌の血清型に関わらず、11種の内3種の漢方方剤が薬剤耐性肺炎球菌に対して発育阻止能を示すことが分かった。以上のことから、呼吸器感染症に処方される漢方方剤の一部は、薬剤耐性菌を含む肺炎球菌に対して直接的作用を示す一方、ヒト肺細胞に対する作用は小さいことが示唆された。
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Jpn J Infect Dis.
巻: 77 ページ: 105-111
10.7883/yoken.JJID.2023.218