研究課題/領域番号 |
21K15661
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
亀田 雅博 京都大学, 医学研究科, 医員 (40893574)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレイル / サルコペニア / 抗酸化物質 / ミトコンドリア / 筋量マーカー / 抗酸化物質 / 骨粗しょう症 |
研究実績の概要 |
2021年度はサルコペニアについて、全血メタボローム解析により22つのサルコペニアマーカーと10つの筋量マーカーを報告した。サルコペニアの代謝的特徴は、ミトコンドリアに関わるメタボライトが低下していたことであった。そして多くのサルコペニアマーカーは腎機能低下で増加するメタボライトであった。 フレイルでは主に抗酸化系のメタボライトの低下が重たる代謝的な特徴であったが、サルコペニアはフレイルマーカーとは異なり、抗酸化系メタボライトはサルコペニアでは関与しておらず、ミトコンドリア系のマーカーの低下が代謝的な特徴であった。このことは、フレイルとサルコペニアが異なる代謝的背景にあることを示唆していた。フレイルとサルコペニアは定義が異なるものの、臨床的には両者は重複する部分も多く、代謝的な背景はこれまで不明確であった。しかしながら、フレイルとサルコペニアの代謝において、明確な差を示唆できたことは病因を解明するために重要であり、フレイルとサルコペニアの病因解明に部分的に貢献することができたと考える。 腎機能とサルコペニアの関係は、腎機能不全でサルコペニアが悪化することからその関連が予想されたが、代謝的には逆でサルコペニアではむしろ腎臓への負荷が減少することが示唆された。腎不全患者に対する低タンパク療法はよく知られているが、筋肉代謝を低下させることで腎臓の負荷を減少させることが一般的に行われていることから鑑みると、筋肉の代謝自体が腎臓への日常的な負荷になっており、“腎機能障害では負荷の原因である筋肉代謝を低下させるためにサルコペニアを誘導する”、“サルコペニアではむしろ腎機能の負荷は軽減する”という新たな代謝認識につながる可能性がある。 このように、フレイルとサルコペニアの代謝的差異を見出したことと、筋肉代謝と腎機能の関係について、新たな関係を発見したことが今年の研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には全血メタボロミクス解析によりサルコペニアに関連する22のメタボライトを英文論文を報告することができた。同様の手法で骨粗しょう症についても複数の骨粗しょう症関連マーカーを発見し、現在英文論文を準備中である。現在フレイル・サルコペニアの病態解明を目的に、モデルマウスと細胞培養によるメタライトの機能解析の実験を継続している。 また文献検索などから治療効果が高いと思われるメタボライトや該当するメタボライトを多く含む食品について介入研究を計画している。ヒトフレイルに対しての食品介入試験については、所属施設の倫理委員会の承認が得られた。ヒトサルコペニアに対する臨床介入試験も計画しており、倫理書類を作成中である。 寝たきり予防について還元するための基礎研究成果はある程度得られているが、質的量的な知見の拡充を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
まず、骨粗しょう症について、全血メタボローム解析について報告を目指す。これまでフレイル、サルコペニアのマーカーを報告してきたが、実際にこれらのマーカーが治療的意味を持つのかが不明確であった。そのため、細胞培養やモデルマウスにより、上記メタボライトが実際に有効かどうかを確認する研究を行う。また、この研究を通じて、フレイルやサルコペニアの病態や筋力低下の原因についての基礎的データ収集を目指す。 また今後のさらなる展開として、寝たきり予防について当研究結果を実臨床へ還元するために、文献検索などから治療効果が高いと思われるメタボライトや該当するメタボライトを多く含む食品について臨床介入試験を計画している。フレイルマーカーに関連する食品を利用したトフレイルに対しての機能性食品試験については当大学の倫理委員会の承認が得られており、今年度に研究を開始予定である。サルコペニアメタボライトを利用したヒトサルコペニアに対する臨床介入試験を計画中であり、倫理書類を作成中である。
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