研究実績の概要 |
2021年度はCD34+CD38-分画に存在する白血病細胞、(putative leukemic stem cell; pLSC)をフローサイトメトリー解析により検出するための基礎データ取得を目的として検討を実施した。分子遺伝学的寛解を達成した骨髄、腫瘍細胞の浸潤がない正常骨髄等において、CD34+CD38-分画での免疫形質と細胞比率を解析したところ、細胞集団は主にCD45RA-に検出されるものの、少数のCD45RA+集団を日常の臨床検査レベルでも検出できることを確認し、特に治療後には無視できない存在比率であることが分かった。文献上はCD34+CD38-CD45RA+に明確な集団が形成されればpLSCと判定できるとされているが、本データはそれらの知見とは異なる。また、CD34+CD38-分画において、正常細胞では発現されないとされるpLSCマーカー(CD7,CD11b,CD22,CD56,CD96,TIM-3,CLL-1等)も一部は発現しうること、CD45RAの有無に応じて発現動態が変化すること、治療前後で発現頻度が変化することを示唆するデータが得られた。さらに、従来よりpLSCマーカーとして考えられてきたCD33およびCD123は、多くの症例において特に治療後にCD34+CD38-で発現が認められたため、治療後のpLSCの判定における重要度は低いことが確認された。以上よりCD34+CD38-分画における正常造血幹前駆細胞と白血病細胞の鑑別について、新規の方法を確立することが重要であることが改めて示され、白血病をはじめとする骨髄系腫瘍の患者の治療前後での詳細な解析を実施したい。
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