研究実績の概要 |
2022年度は主に、急性白血病や骨髄異形成症候群などの骨髄系腫瘍の異常細胞 (白血病細胞) におけるCD34(+)CD38(-)分画の細胞比率と免疫形質についてのデータ蓄積を目的として研究を実施した。正常骨髄のCD34(+)CD38(-)分画の細胞は、CD45RAの発現の有無に応じて異なる免疫形質を示すことが前年度の研究において明らかとなったことから、CD7,CD11b,CD22,CD56,CD96,CLL-1,TIM-3の陽性判定基準をCD45RAの発現の有無に分けて設定した。その結果、CD34(+)CD38(-)CD45RA(+)で検出された白血病細胞では、ほとんどの症例で上記マーカーの中のいずれかが陽性であった。その一方でCD34(+)CD38(-)CD45RA(-)で検出された白血病細胞では上記マーカーの陽性率が低く、この分画では免疫形質に依存した白血病細胞の判定が困難である症例が多かった。また、CD34(+)CD38(-)分画のCD45RAが連続的に発現、あるいは弱陽性を示す症例も一部に存在したが、これらの症例ではCD45RA(+)と同様にいずれかのマーカーが陽性となることが多かった。今回使用したマーカーのうち、特にCLL-1は非常に陽製頻度が高く、正常細胞での発現がほとんど認められないことと合わせて、CD34(+)CD38(-)分画における白血病細胞の判定に非常に有用であった。正常CD34(+)CD38(-)CD45RA(+)では恒常的に発現が確認されたCD22は、白血病細胞では陰性の症例も認められ、CD22に関しては逆に発現の減弱が白血病細胞判定の基準となりうる。各々のマーカーの陽性を一概に異常性の判定に用いるのではなく、その背景となる分化段階を考慮した解析が重要であると考えられる。
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