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2023 年度 実施状況報告書

NAMPTをターゲットとした変形性膝関節症に対する電気鍼治療効果の基礎的解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K15669
研究機関昭和大学

研究代表者

池本 英志  昭和大学, 医学部, 助教 (40568119)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード電気鍼治療 / 変形性膝関節症 / NAMPT / Sirt1 / ADAMTS5 / 滑膜細胞
研究実績の概要

変形性膝関節症(膝OA)の発症・進行には、関節軟骨のアグリカンを分解するADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)遺伝子ファミリー分子のひとつであるADAMTS5が重要な役割を果たしており、関節滑膜はその供給源のひとつである。本年度は膝OA(DMM)モデルラットを作製し、膝滑膜におけるADAMTS5の発現に対する電気鍼(electroacupuncture:EA)の効果について検討した。実験では動物を5群に分けた:Control群、Sham群、DMM群、DMM+EA(足三里-曲泉)群、DMM+EA(足三里-膝頂)群。EAは経穴に対して2Hz、30分、週3回、4週間実施した。各群膝関節軟骨を採取し、サフラニンO・ファストグリーン染色を行い、関節損傷の程度をOARSIスコアで評価した。さらに膝滑膜組織を用いてADAMTS5の発現をWestern blottingにより測定した。その結果、Control群に比べて、DMM群ではOARSIスコアと膝滑膜ADAMTS5の発現が有意に増加したが、DMM+EA(足三里-膝頂)群ではそれらが有意に抑制された。またDMM+EA(足三里-曲泉)群ではこの効果は認められなかった。これらの結果から、足三里-膝頂を組み合わせたEAは膝OAモデルの滑膜からのADAMTS5の発現を抑制して、関節軟骨のアグリカン分解を防いで関節破壊を予防する可能性が示された。また膝周辺に存在する経穴であっても、その効果は異なる可能性が示唆された。この結果の一部を、日本生理学会第101回大会で報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和5年度は、膝OAモデルラットの膝関節軟骨損傷の程度をOARSIスコアで評価し、膝滑膜組織におけるADAMTS5の発現レベルの評価をすることができた。それによって、足三里と膝頂をペアとする経穴へのEAが、経穴特異的に膝滑膜からのADAMTS5の発現を抑制し、関節軟骨のアグリカン分解を防いで関節破壊を予防する可能性を示すことができた。
一方で、関節破壊を誘発するADAMTS5やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の供給は滑膜組織からだけでなく、軟骨細胞からも行われるため、今年度は軟骨組織を使ってWestern blotting用サンプルの作製を試みた。しかし、サンプルの調整法を確立するまでには至っておらず、予想以上の時間を要している。また膝OAの改善のカギとなるNAMPTは脂肪細胞で発現することから、膝蓋下脂肪体および皮下脂肪をホモジナイズしてタンパク定量を行い、サンプルを作製した。しかし、こちらも脂肪の混入、ローディングコントロールが安定しないなどの結果が出て、サンプルの調整法を確立するまでに予想以上の時間を要している。

今後の研究の推進方策

令和6年度ではEAによる脂肪組織からのNAMPT産生の解明を目指す。NAMPTは脂肪細胞から産生されることから、膝蓋下脂肪体・皮下脂肪組織からサンプルの調整法を確立し、血漿と合わせてNAMPT発現量をWestern blotting法およびELISA法を用いて解析する。また軟骨組織からのWestern blotting用サンプルの調整法の確立も急ぎ、MMP、ADAMTS5、およびSirt1の発現量を測定する。
また令和6年度は膝軟骨細胞をIL-1βで刺激したin vitro炎症性モデルを用いたEAの軟骨保護効果と機序の解明を目指す。正常ラット膝関節軟骨から単離した軟骨細胞にIL-1β(0.1 ng/ml)を添加してin vitro炎症モデルを作製する。そこへEA刺激後のラット血漿を添加する。EAによって脂肪細胞から産生されたNAMPTが軟骨細胞のSirt1発現を促し、細胞外マトリックスを分解するMMPおよびADAMTS5の発現を抑制するかを検証する。

次年度使用額が生じた理由

令和5年度は前述の通り、膝蓋下脂肪体・皮下脂肪組織および軟骨組織からのタンパク抽出、サンプル調整法の確立に時間を要してしまった。しかも未だ継続中である。その結果、計画していた実験が遅れ、次年度使用額が生じた。これらの調整法確立とその検証に追加の研究費が必要となる。また、その試料を用いてNAMPT、NAD、Sirt1の発現を生化学的に検討していくために、各種抗体、ELISAキット、NAMPT阻害剤等の購入に研究費を充てる予定である。さらに、正常ラット膝関節軟骨から単離した軟骨細胞を使ったin vitro実験を開始するために、実験動物、試薬、軟骨細胞外基質分解酵素測定用として各種ELISAキットなどを購入する予定である。そして、次年度はこれまでの結果と新たな結果をまとめ、国内外の学会への参加・発表、論文作成を行い、発信をしていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Duration of the preemptive analgesic effects of low‐ and high‐frequency transcutaneous electrical nerve stimulation in rats with acute inflammatory pain2024

    • 著者名/発表者名
      Ikemoto Hideshi、Adachi Naoki、Okumo Takayuki、Chuluunbat Oyunchimeg、Hisamitsu Tadashi、Sunagawa Masataka
    • 雑誌名

      The Kaohsiung Journal of Medical Sciences

      巻: 40 ページ: 456~466

    • DOI

      10.1002/kjm2.12818

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 変形性膝関節症モデルラットにおける協調運動とADAMTS5の発現に対する鍼通電の効果2024

    • 著者名/発表者名
      チュロウンバト オユンチメグ,池本 英志,安達 直樹,奥茂 敬恭,Chu Zewen,Guo Shiyu,Liu Yangqing,久光 正,砂川 正隆
    • 学会等名
      日本生理学会第101回大会
  • [学会発表] 変形性膝関節症モデルラットに対する鍼通電の効果 -使用する経穴の差異についての検討-2024

    • 著者名/発表者名
      チュロウンバト オユンチメグ,池本英志,久光正,砂川正隆
    • 学会等名
      第73回全日本鍼灸学会学術大会
  • [学会発表] Effects of electroacupuncture on joint pain and cartilage degeneration in knee osteoarthritis rats2024

    • 著者名/発表者名
      Hideshi Ikemoto, Chuluunbat Oyunchimeg, Takayuki Okumo, Naoki Adachi, Tadashi Hisamitsu, Masataka Sunagawa
    • 学会等名
      IASP 2024 World Congress on Pain
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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