研究課題/領域番号 |
21K15674
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 誠 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (80880301)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | てんかん / 脳磁図 / 体性感覚誘発磁界 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、覚醒・睡眠を厳密にわけた体性感覚誘発磁界(SEFs)を用いて大脳・視床間の興奮系と抑制系のバランス異常の評価を行い、てんかん発作関連領域外のネットワーク異常を明らかにすることである。研究期間初年度同様、次年度においてもSEFsの健常者における覚醒・睡眠の影響を確立するため、健常者の被験者募集を行う予定であったが、コロナウイルスの影響により、困難であった。 てんかん患者の計測は可能であったため、てんかん患者におけるSEFsを用いたてんかん性ネットワーク異常の解明を継続中である。 初年度において、SEFsの起源である体性感覚野がてんかん原性領域となる若年生ミオクロニーてんかん(JME)患者において、SEFsに異常をきたすかを検討するため、JME患者9例18側と健常者10例20側でSEFsの比較検討を行った結果、両者で潜時に差を認めないが、振幅に関して、JME患者でSEFsの第3波が健常者よりも増大することが明らかになった。 SEFsの振幅への影響因子として、抗てんかん発作薬の関連が考えられたため、実際に影響があるかをJME患者10例20側で追加検討を行った。その結果、JMEにおけるSEFsの振幅の増大と抗てんかん発作薬の間には有意な相関関係を認めなかった。 最終年度となる今年度は、コロナウイルスによる影響を考慮する必要がなくなるため、健常者の被験者募集を早急に行う予定である。また、東北大学医学系研究科てんかん学分野と工学系研究科で共同開発中のトンネル磁気抵抗素子を用いた磁場センサ(TMR磁気センサ)によるSEFs計測も実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度より計画していたSEFsの健常者の被験者募集が、コロナウイルスの影響により遅れてしまっている状況である。一方で、初年度以前に計測した健常者のSEFsデータを用いて、SEFsへの睡眠による影響は検討済みである。 てんかん患者におけるSEFsを用いたネットワーク異常の検討も進行中であり、若年ミオクロニーてんかんにおけるSEFs異常において抗てんかん発作薬が影響しないという新たな研究結果を得られている。 予定しているTMR磁気センサによるSEFs計測に関しても、センサの磁場検出感度上昇に伴い、今年度に実施が可能と考えられる。 次年度の研究成果に関しては、2022年6月に開催された第37回日本生体磁気学会大会のシンポジウムおよび奨励論文賞受賞講演において、てんかん患者の脳磁図計測におけるアーチファクトや側頭葉てんかんにおけるSEFsの異常に関する講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間初年度に引き続き、次年度においてもSEFsの健常者における覚醒・睡眠の影響を確立するため、健常者の被験者募集を行う予定であったが、コロナウイルスの影響により、困難となった。しかし、初年度以前に計測した健常者のSEFsデータを用いて、SEFsへの睡眠による影響は検討済みである。 てんかん患者におけるSEFsを用いたネットワーク異常の検討は、引き続き継続中である。 今後の新たな取り組みとして、東北大学医学系研究科てんかん学分野と工学系研究科で共同開発中のトンネル磁気抵抗素子を用いた磁場センサ(TMR磁気センサ)によるSEFs計測を行う予定である。従来のSQUID脳磁計では、センサを超低温状態に保つために液体ヘリウム容器に格納する必要があり、被験者はセンサが格納されたヘルメット内で頭を固定し、運動を制限された姿勢を保持しなければならず、長時間の記録が困難である。また、容器の厚みでセンサと頭皮との距離が離れてしまい、その距離の2乗分、脳磁場の検出感度が低下する。一方、TMR磁気センサは、室温で作動するため、液体ヘリウムに格納する必要がなく、体表での生体磁場計測が可能となる。センサが体表に近づく分だけ磁場の検出感度が向上する。また、本センサの素子のダイナミックレンジが広いことから、地磁気レベルの環境磁場ノイズが存在する状況であっても使用することができ、シールドルーム外で脳磁場記録が可能であり、普段の生活環境下で生体磁場が計測できる可能性があるため、睡眠時の脳磁図記録が必要な本研究にとってTMR磁気センサが有用であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間初年度に続き次年度においても、SEFsの健常者における覚醒・睡眠の影響を確立するため、健常者の被験者募集を行う予定であったが、コロナウイルスの影響により困難となった。今年度は、TMRセンサを用いたSEFs計測のための被験者募集を再開し、脳磁図利用料および謝礼として使用する予定である。
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