課題関連機能的MRIにおける課題遂行の負荷を低減する方法として、受動課題刺激を用いた実験パラダイムを提唱した。また神経変性疾患、とりわけ認知症性疾患、パーキンソン病、健常高齢者を鑑別するために有用な課題刺激として、①顔・風景刺激、②視運動刺激、③顔・風景刺激(自伝史、①の再認および新規)を用いた実験パラダイムを提唱し、その計測を行って実行可能性を示した。しかし、コロナ流行下で被験者のリクルートが困難であり、実撮像は困難であった。 データ解析では、コホート研究における安静時機能的MRIデータを用いて、疾患診断および病態学的解明を行った。具体的には以下の解析を行った。①パーキンソン病の前駆症状であるレム睡眠関連行動異常症に着目し、安静時機能的MRIから計算された機能的結合に基づいて健常高齢者に対しての判別器を作成し、さらに判別に重要なネットワークを明らかにした。②アルツハイマー型認知症、認知障害のないパーキンソン病、認知障害があるパーキンソン病、健常高齢者より得られた安静時機能的MRIに対して動的機能的結合解析を行った。時変相関行列を用いてk平均法によるクラスタリングを行い、全グループに共有される2つのネットワークパターン(ネットワーク結合が密なパターン、疎なパターン)があること、また認知症性疾患ではネットワークパターン間の遷移が健常被験者あるいはパーキンソン病で異なることを明らかにした。 MRIは臨床に欠かせないツールであるが、現在は構造MRIが用いられている。一方で脳機能を可視化できる機能的MRIは、様々な課題があるものの情報量が豊富であり、その応用可能性は高い。本研究の結果はその臨床応用性を高めるものと考える。
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