研究実績の概要 |
本研究は、錯視という、物を見るときに誤って認識してしまう現象と、視線解析装置という人の視線の動きを記録する装置を組み合わせることにより、認知症を早期に診断する手法の開発を目指すものである。 令和3年度はその前段階として、人の視線の特徴を詳しく調べることを目的に、脳深部刺激療法(DBS)が図形を見る際の人の視線の動きに及ぼす影響を解析した。結果として、図形を見る際の眼球の加速や減速に要する時間はDBSの影響を受けないことを示した。 令和4年度は、若手研究「視線解析を用いた認知症の診断方法の開発」(19K17046)の内容とも重複するが、これまでに蓄積したアルツハイマー病患者と健常高齢者の視線解析のデータを比較し、アルツハイマー病における眼球運動や視線の挙動の特徴を見出した。すなわち、アルツハイマー病患者は、画像を見る際に重要な場所への注目をあまりせず、物を探索する課題をさせると目標物に辿り着くまで多くの視線の動きが必要となる。さらに瞳孔径を比較すると、健常者では視覚探索課題の実施中に瞳孔径が拡大するが、アルツハイマー病の患者ではその拡大が目立たない。これらの特徴を用いると健常者とアルツハイマー病の患者を鑑別することが可能であるということを示し、論文を執筆して投稿した結果、令和4年度内に採択され公表された(Tokushige SI, Matsumoto H, Matsuda SI, et al., Early detection of cognitive decline in Alzheimer's disease using eye tracking. Front Aging Neurosci. 2023;15:1123456)。 令和5年度は、アルツハイマー病の瞳孔面積に関する研究成果を日本神経学会の学術大会で発表した。
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