研究課題/領域番号 |
21K15688
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
本郷 悠 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (60813798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CIDP / NF155抗体 / CCPD / 動物モデル / 脱髄性疾患 |
研究実績の概要 |
中枢末梢連合脱髄症(CCPD)かつ血清NF155抗体陽性の患者から抽出したIgG(CCPD-IgG)をマウス中枢神経に慢性投与することにより、CCPDの動物モデル作出を試みている。 ①行動実験の結果、Rotarod装置およびfoot print testを用いた検討で、正常ヒトIgGを投与した群に比較して、CCPD-IgGを投与した群のマウスは、歩行時の後肢歩隔の有意な拡大が見られることを確認した。Rotarodでの成績には両群の大きな違いは見られなかった。また、②組織学的検討の結果において、申請時にはCCPD-IgGはマウスのオリゴデンドロサイト特異的に反応していると考えていたが、その後の詳細な解析の結果、CCPD-IgGは、マウスのミクログリアに特異的に反応することが明らかとなった。正常ヒトIgG投与では左記のようなミクログリアに対する抗体反応性を認めなかった。なお、少数例の検討であるがCCPD-IgG投与マウスのKluver-Barrera染色では明確な脱髄斑を認めないことも確認した。 これらの成果は、①ヒト由来CCPD-IgGのマウス中枢神経投与モデルがCCPDの疾患モデルとなり得る可能性を示唆し、また、②CCPD-IgGによる中枢神経障害/臨床症状発症のメカニズムが、必ずしも従来考えられているような、抗体の髄鞘への直接作用による脱髄機序によるものとは限らない可能性を示している、と考えられる。すなわち、今年度の研究により、いまだ世界に存在していないCCPDの動物モデル作出の端緒につくことができ、また、CCPDの中枢病変形成メカニズムの一端を知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
NF155抗体陽性かつ、CCPDを発症していない末梢神経障害のみの例の血清IgG(Neuropathy-IgG)をマウス中枢神経系に投与し、CCPD-IgG投与例との臨床表現上あるいは病理組織学上の差異を確認する。そのようにすることで、ヒトにおけるNF155抗体陽性例で、中枢神経障害を合併する(=CCPDとなる)場合と、末梢神経障害のみにとどまる場合がある原因についての推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のために参加する学会等が、新型コロナ流行のために現地開催が行われなくなる例が多くあり、旅費に計上していた経費が不要となったため、次年度使用額が生じた。 翌年度には課題検討中に明らかとなった、ミクログリアに対する抗体反応性の詳細を解析するための検討を開始し、申請前に計画していた研究よりもより詳細な病態メカニズムの解明に着手することで、効率的な経費使用を行いたい。
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