研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)は中枢神経系に脱髄病変が多発する神経難病である。MSでは血液脳関門(Blood brain barrier, BBB)の破綻が脱髄に先行するため、BBB破綻を評価することが重要になる。臨床的BBB破綻マーカーである血液・髄液中のアルブミン比(Qalb)や造影MRIは侵襲的で、頻回の施行は困難であり、治療効果判定への応用は難しい。MSのBBB破綻機序として血流低下に伴うミトコンドリア機能低下による血管内皮細胞の密着結合の障害が示唆されている。 microRNA(miRNA)は20-24塩基の小分子RNAで、転写後制御を介して標的遺伝子の発現を制御している。miRNAはエクソソームという小胞顆粒に内包され、細胞間コミュニケーションツールとして働く。エクソソームは細胞から能動的に分泌されるためその細胞の状態を反映することから、疾患状態をより反映すると考えられる。我々は予備実験の結果から、miR-34aがMS患者のミトコンドリア機能を低下させていると予想した。 現在、実験計画の第一段階であるMS患者血清におけるエクソソームmiRNAの検討を行っている。 健常人および患者血清より、中枢神経由来のエクソソームを抽出、電子顕微鏡でエクソソーム様構造物を確認した。現在、miR-34aを含む数種類のmicroRNAについて、10例程度のエクソソーム中のmicroRNAを測定中である。
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