中枢神経由来のエクソソームmiRNAを血液検体から抽出する技術を用いて、ミトコンドリア機能と関連が報告されているmiR-34a、miR-145、miR-146aを再発期の多発性硬化症(MS)患者10名、健常人8名の血清を用いて測定した。ここで、Ct(threshold cycle)は、反応の蛍光シグナルが Threshold Line(閾値)を超えた時のPCR サイクル数を意味し、遺伝子の発現量が多いほど、有意な増幅が見られるサイクル数の値は小さくなる(Ct値は小さくなる)。他のサンプルとの比較を可能にするため、内在性コントロールの補正を加えた⊿Ct値が解析に用いられる。解析の結果、MSの再発時血清では健常人に比しmiR-145の⊿Ct値が有意に低下していた(中央値15.3 vs 15.9、四分位範囲0.86 vs 1.0、P=0.043)。さらに、そのMS患者10名においてMS患者の臨床的重症度を示すKurtzke’s Expanded Disability Status Scale(EDSS)を用いた検討を行った結果、再発6か月後のEDSSとmiR-145の⊿Ct値が正の相関を示す傾向にあった(Spearman’s rho=0.59、P=0.072)。すなわち、miR-145の発現が高いと6か月後の重症度が低い傾向にあることを意味し、miR-145がMS再発時に保護的に機能している可能性があることを示唆する所見を見出した。
|