研究課題/領域番号 |
21K15693
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 晋一郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (60828375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 球脊髄性筋萎縮症 / Clチャネル / メキシレチン塩酸塩 / リバーストランスレーショナルリサーチ / titin |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、SBMA患者の骨格筋変性に対する病態生理を解明し、運動機能に関連する客観的なバイオマーカーを見出すことで、リバーストランスレーショナルリサーチへと展開することである。 研究代表者は予備的研究においてSBMA患者のほとんどが寒冷環境下で著しい筋力低下を生じる寒冷麻痺やミオトニアを自覚していることに着目し、骨格筋細胞膜に豊富に存在するイオンチャネルが筋力低下の鍵を握ると考え、研究を進めてきた。寒冷麻痺およびミオトニアの原因として報告されているNaチャネルおよびClチャネルの発現をRT-PCRおよびウエスタンブロットで解析した結果、SBMA患者の骨格筋ではClチャネルのmRNAおよび蛋白質の両者が低下していることが明らかとなり、SBMAの病態の背景にNa電流異常が存在することが示唆された。そこでSBMAのモデルマウスに対してNaチャネルブロッカーであるメキシチレン塩酸塩を腹腔内投与したところ、生理食塩水投与群に比して運動機能の改善を認め、反復経口投与試験においてはメキシチレン塩酸塩投与群において生存期間の延長を確認したことから、メキシチレン塩酸塩の効果を裏付けることができた。 また、SBMAでは病勢や薬効を鋭敏に反映するバイオマーカーが未確立である。SBMAの骨格筋変性の観点から、横紋筋特異的に発現する蛋白質であるTitinに着目した。本研究では、多数例のSBMA患者の尿中N-末Titinを解析したところ、健常人やその他の運動ニューロン疾患、末梢神経障害に比して著明に上昇していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SBMAのモデルマウスに対するメキシチレン塩酸塩の腹腔内投与、反復経口投与試験はおおむね完了し、SBMA患者の多数例による解析においても尿中N-末Titinの上昇を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
運動ニューロン疾患において切断され尿中レベルが上昇するメカニズムを解明することで、運動ニューロン疾患の骨格筋変性病態に迫る。今後は、マウス坐骨神経切断モデルおよびSBMAモデルマウスの骨格筋組織を用いたN末titin断片のウエスタンブロットなどを実施することにより、運動ニューロン変性において、神経原性の筋障害によって尿中titinが上昇する分子メカニズムを明らかにする。
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