研究課題/領域番号 |
21K15695
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神吉 秀明 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (10774218)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CRTC / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
脳梗塞においてはNeurovascular unitにおける様々なシグナルが活性化されるが、その中でもCREB-CRTCシグナルの重要性を我々はこれまでに見出してきたが、十分に検討出来たとは言えない状況である。そこで、CRTC familyが脳梗塞をはじめとする神経病態においてどのような役割を果たすか更なる検討を行うこととした。近年、mRNAをコントロールするmicroRNA(miRNA)が様々な疾患で重要な役割を果たすことが分かってきて、かつ脳梗塞においても重要な働きをすることが判明してきた。我々が検討してきたCREB-CRTC familyにおいてもmiRNAが重要な役割を果たしていることが考えられ、その観点から検討を行ってみた。具体的にはCRTCで制御されるmiRNA132/212が脳梗塞においてどのような役割を果たすのかを検討した。まず、CRTC1がmiRNA132/212の発現に影響を与えていることがわかり、CRTC1 knock outにおいてmiRNA132/212の発現は減少し、実験的脳梗塞においては、CRTC1 knock outマウスにおいて24時間後において脳梗塞は増悪を認め、神経所見においても増悪を認めた。実験的脳梗塞において24時間後に血管を評価したところ、CRTC1 knock outマウスにおいて血管の脆弱性があることが分かった。さらに、miRNA132が3’末端において、RNA-binding Fox-1(RBFox-1)や細胞膜の裏打ち蛋白であるClaudin-1、tight junction-associated protein 1 (TJAP-1)と関連を認めていたことが判明した。このために、CRTC1により調整されているmiRNA132/212が実験的脳梗塞において神経ダメージを上記の機序において減少させていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRTC familyの脳梗塞を初めとする神経病態においてどのように作用するのかを検討しているところである。研究実績の概要の所で記載したが、今回、CRTC1とmiRNA132/212の関連性や脳梗塞における役割については報告している。血管内皮細胞におけるCRTCの意義の観点からも検討を行ったが、上記のCRTC1とmiRNA132/212も血管内皮細胞機能に関連していることが分かった。CRTC1とCRTC2のdouble knock outマウスにおいてどのように血管内皮細胞機能が変化するのか、miRNA132/212がどのように変化するのかは現在検討中である。マクロファージや脂肪組織におけるCRTCが脳梗塞にどのように影響を与えるのかについてもCreマウスを用いて検討を行う予定で準備を整えているところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにCRTC1とCRTC2のそれぞれのknock outマウスにおいて脳梗塞が増悪することが判明し、そのそれぞれの機序として血管内皮の脆弱性があることが判明した。今後CRTC1とCRTC2のdouble knock outマウスを用いて検討を行って行き、血管内皮細胞における観点からCREB-CRTCシグナルの果たす意義を追及して行きたい。また、今回miRNA132/212に着目したが、それ以外のmiRNAが関連している可能性も十二分に考えられるので、RNA seq等を用いて幅広くスクリーニングを行い、新規のmiRNAの可能性も模索して行きたいと考えている。また、マクロファージ特異的なCRTC2 knock outマウスを用いての検討と合わせてAdiponectin特異的なCRTC2 knock outマウスを用いての検討を行って行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験に使用する物品の購入が実験の都合により延期したために次年度使用額が生じた。次年度早めに実験で物品購入に使用する予定である。
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