研究課題/領域番号 |
21K15700
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤井 敬之 九州大学, 大学病院, 医員 (30822481)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小径線維ニューロパチー / 自己抗体 / 神経障害性疼痛 |
研究実績の概要 |
2021年度、私たちは、日本と韓国の小径線維ニューロパチー患者63名(特発性38名、二次性25名)を対象として、ELISAならびに組織染色法にて抗Plexin D1抗体測定したところ、全体で63名中8名(12.7%)で陽性者を認め、特発性では38名中6名(15.8%)、二次性では25名中2名(8%)で陽性者を認めた。抗Plexin D1抗体の抗体価は、検査時年齢や発症時年齢と相関せず、罹病期間と有意な相関を認め、抗体価の上昇においては抗体価の上昇において親和性成熟 (Affinity Maturation)が重要だと考えられた。抗Plexin D1陽性小径線維ニューロパチー患者の臨床的特徴として、発症年齢の平均は56.6歳で、慢性の経過をたどり、抗Plexin D1抗体陽性小径線維ニューロパチー患者では、SFN-Symptom Inventory Questionnaire (SFN-SIQ)において灼熱足の割合が高く(85.7%)、疼痛の性状として、灼熱痛(75.0%)や刺痛(62.5%)といった小径線維障害を反映する症状の割合が高いことを明らかにした。 また、私たちは、小径線維ニューロパチーの新規の原因と考えられる自己抗体を発見した。自己抗体の測定系としてELISAを確立し、神経障害性疼痛患者72名を対象として、抗体を測定したところ、7名(9.7%)で陽性が確認された。新規自己抗体が、末梢神経の小径線維に結合し、作用して、疼痛を惹起している可能性が示唆され、新規の小径線維ニューロパチーの自己抗体となりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の学術的問いであった「特発性小径線維ニューロパチーにおいて、自己抗体介在性小径線維ニューロパチーがどのくらいの割合で存在し、どのような臨床的特徴を有しているか」について、臨床研究を通じて、解明することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、新規自己抗体の精度の高い測定系を開発し、新規自己抗体患者の臨床的特徴を明らかにしていく予定である。さらに、新規自己抗体をマウス後根神経節ニューロンに作用させ、細胞レベルでどのような変化を誘導するか、そしてその変化は小径後根神経節ニューロンの活性化を制御する薬剤を投与することで阻害できるのかの解析を進めていく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、ELISAプレートや抗体等について、当研究室で使用していたものを利用したため、使用額がおさえられた。また、コロナ禍でリモートでの学会参加が多く、旅費の使用額もおさえられた。未使用分については、次年度以降の実験を進めるにあたり、必要な試薬や抗体の購入に充当する。
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