研究課題/領域番号 |
21K15703
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
張 旭 国際医療福祉大学, トランスレーショナルニューロサイエンスセンター, 特任助教 (60892669)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 / 自己抗体 / 神経免疫疾患 / 脱髄 / ノド抗体 / IgG4 |
研究実績の概要 |
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、自己免疫機序が推定されているが、抗原は未解明で根治療法はない。一部のCIDPでは、ランビエ絞輪部に局在するneurofascin 155 (NF155)などのノド蛋白に対するIgG4クラスの自己抗体が報告され、特異な病像を呈することから自己免疫性ノドパチーという新しい疾患概念でまとめられようとしている。NF155抗体陽性CIDPは、若年発症、感覚性失調、髄液蛋白著明高値、MR neurographyでの顕著な神経根腫大、高率に合併する視覚誘発電位異常、免疫グロブリン静注療法抵抗性等の共通した特徴を示す。しかし、類似の特徴を有するものの、抗体陰性例も存在する。そこで本研究では抗原未同定のCIDP104例の血清を、私たちの確立した坐骨神経と後根神経節標本を用いた組織免疫染色で、ランビエ後輪部を特徴的に染色するケースをスクリーニングし、5例の陽性例を見出した。これらの症例は、ランビエ傍後輪部と後根神経節のsatellite gliaを特異的に染色した。坐骨神経と後根神経の粗抽出蛋白のウェスタンブロットで60kDの陽性バンドが得られた。自己抗体のサブクラスは、いずれもIgG4だった。これらの特徴から、leucine-rich repeat LGI family, member 4 (LGI4)が候補抗原として考えられた。市販の抗LGI4抗体は、坐骨神経と後根神経節を患者血清と同じパターンで染色した。LGI4を恒常的に発現するラットシュワン細胞とヒトメラノーマ細胞でsmall interference RNAでLGI4の発現を低下させると、患者血清の染色性が著減したことから、LGI4が新規ノド抗原と考えられた。現在、発症機構の解明を培養シュワン細胞への作用を調べることで進めている。私たちは、新たなIgG4ノドパチーを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規自己抗体を発見し、その責任抗原の同定まで達成できたため。陽性例は特異な病像を呈することから、IgG4抗LGI4陽性CIDPは、ユニークなCIDPサブタイプと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、培養シュワン細胞への作用を明らかにしつつある。また、HEK293細胞にLGI4とその受容体であるADAM22をco-transfectionした細胞で、患者血清の反応性を調べている。これにより抗体測定のゴールドスタンダードであるcell-based assayが確立できると期待される。特異性の高いcell-based assayで多数例のCIDP患者をスクリーニングすることで、病像や免疫療法への反応性を明らかにできると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する抗体などの試薬の納品が遅れるため。
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