研究課題
統合失調症は慢性に経過する精神疾患であり、病態仮説の一つとしてGABA機能異常が知られている。パルブアルブミン陽性インターニューロン等によるGABAの伝達はγ帯域オシレーションの形成に重要な役割を果たしており、その異常が統合失調症の病態と関連すると考えられる。MRIの撮像法の一つにMRスペクトロスコピー(MRS)があるが、近年はGABA濃度を測定することが可能になった。最近のMRI構造画像研究により、統合失調症における大脳基底核の体積増加が示されている。また、大脳基底核に関連する直接路および間接路はともに、GABA機能との関連が示されている。したがって、大脳基底核におけるGABA機能を調べることは重要である。本研究では、統合失調症患者を対象として、大脳基底核MRSデータを取得し、疾患横断解析および症状関連解析を施行する。令和4年度には、既存の大規模思春期コホートMRSデータを用いて、GABAと関連の大きいグルタミン酸の脳内濃度と統合失調症発症リスクとの関連を探索し、脳内グルタミン酸濃度が、統合失調症発症リスク因子である閾値下精神病症状およびいじめ被害との関連があることを見出した。なおGABA濃度との関連は認められなかった。令和5年度には、この解析結果についてMolecular Psychiatry誌で発表した。
2: おおむね順調に進展している
業績発表をするなど、おおむね順調に進展している。
令和6年度は、被験者リクルートとデータ取得を施行し、解析結果について学会発表をおこない、国際英文誌への投稿を目指し論文を作成することを目標とする。
MRI撮像(データ収集)が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降、データ収集(MRI利用料・謝金)、成果発表(学会発表・論文発表等)等に使用する計画である。
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Mol Psychiatry
巻: - ページ: -
10.1038/s41380-023-02382-8