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2021 年度 実施状況報告書

早期抗うつ効果発現を可能とする脳内分子神経メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15711
研究機関京都大学

研究代表者

李 海燕  京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (90840314)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワード抗うつ薬 / うつ病 / 遺伝子発現
研究実績の概要

次世代型抗うつ薬として非モノアミン系を標的とした薬剤開発が期待されているものの、動物試験で有効であっても臨床試験では効果不十分であったり、重篤な副作用が出現して開発が中断している。基礎研究から応用研究への展開の阻害要因として以下の点が指摘されている。1) 妥当性の高いうつ病モデルマウスを使用していない、2) 遺伝的多様性が無視されている。本研究では、従来の問題点を克服した新しい研究アプローチを用いることで、抗うつ作用に関わる新たな分子メカニズムを同定することを目的とする。具体的には、抗うつ薬に対する反応性の異なる近交系マウスを用いて、既存の抗うつ薬に対して抗うつ効果を示した反応群と効果を認めない非反応群を作製した。これら反応群と非反応群のマウス脳内神経活動、網羅的遺伝子発現解析を行い、抗うつ作用に重要な責任細胞集団・遺伝子群を同定する。本年度は、遺伝的背景の異なる複数の近交系マウスを用いて、既存の抗うつ薬の短期間投与に対して抗うつ効果を示した反応群と効果を認めない非反応群を作製した。これら反応群あるいは非反応群に共通の発現変動遺伝子を次世代シークエンス解析により抽出した。抽出した遺伝子について、脳部位特異的遺伝子操作マウスを作製し、抗うつ薬反応性とストレス反応性を検討した。これら一連の解析から、遺伝的背景に依存せず様々なタイプの抗うつ薬に共通して発現変動する遺伝子としてCartptを同定することに成功した。特に前帯状皮質におけるCartpt発現の有意な増加を認めた。実際に、Cartptをウイルスベクターにより前帯状皮質局所的に発現させたマウスは抗うつ様行動とストレスレジリエンスを示した。これらの結果は、Cartptが新たなうつ病治療標的となり得る可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

遺伝的背景の異なる3種類の近交系マウスに各種抗うつ薬(三環系、四環系、SSRI、SNRI)を投与し、抗うつ薬反応群・非反応群マウスの前帯状皮質領域の遺伝子発現変動をRNA-seqにより解析した。得られた遺伝子発現データから、反応群に特徴的な遺伝子・パスウェイを探索し、Cartpt遺伝子の同定に至った。当該年度の目標を達成しており、研究は予定通り順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今年度の分子レベルでの成果をさらに発展させるため、細胞・回路レベルへの実験に発展させる。具体的には、薬理遺伝学的手法を用いた神経活動操作により、抗うつ薬反応群・非反応群の神経ネットワーク変容を解析する。このような行動・回路・細胞・分子レベルでの多階層解析により、遺伝的背景に依存せず既存の抗うつ薬よりも効果発現までの時間を短縮可能な新たな脳内メカニズムを同定する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Antidepressant Response and Stress Resilience Are Promoted by CART Peptides in GABAergic Neurons of the Anterior Cingulate Cortex2022

    • 著者名/発表者名
      Funayama Yuki、Li Haiyan、Ishimori Erina、Kawatake-Kuno Ayako、Inaba Hiromichi、Yamagata Hirotaka、Seki Tomoe、Nakagawa Shin、Watanabe Yoshifumi、Murai Toshiya、Oishi Naoya、Uchida Shusaku
    • 雑誌名

      Biological Psychiatry Global Open Science

      巻: ー ページ: ー

    • DOI

      10.1016/j.bpsgos.2021.12.009

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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