研究課題
研究に用いる死後脳試料は異なる二施設に保管されたものであるため、施設による相違という定量化できない様々な交絡因子の積み重ねで生じるタンパク質発現量に対する影響について評価を行い、保管された施設の違いによる有意な差がないことを確認した。その後論文投稿した(Nagaoka et al. Neuropsychopharmacol Rep. 2024)。プロリン代謝経路の統合失調症病態への関与に注目し、統合失調症死後脳と非精神疾患対照死後脳の脳試料を用いて代謝酵素のタンパク質発現量をELISA法を用いて調べ、Aldehyde Dehydrogenase 4 Family Member A1 (ALDH4A1)が統合失調症死後脳で有意に高いこと、Proline oxidase(PRODH)、Pyrroline-5-carboxylate synthetase(ALDH18A1)が統合失調症死後脳において有意に低いこと、Prolidase(PEPD)、Ornithine Aminotransferase (OAT)とPyrroline-5-carboxylate reductase (PYCR)に有意な変化はないことを見出した。プロリン代謝経路に関与するアミノ酸であるプロリン、グルタミン酸、オルニチンについての定量解析をLC/MS/MS法を用いて行い、統合失調症死後脳における変化について検討した。今回行った検討では統合失調症死後脳での有意な変化は認められなかった。統合失調症死後脳におけるプロリン代謝酵素の変化はプロリンをグルタミン酸に代謝するプロリン代謝経路が統合失調症において亢進しグルタミン酸産生過剰になるという仮説を支持するものであり、今後論文投稿準備中である。
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