研究課題/領域番号 |
21K15722
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
西岡 将基 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00780503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / ヘテロプラスミー / 分子バーコード / 一分子シーケンス / 精神疾患 / 気分障害 / 双極性障害 / 死後脳 |
研究実績の概要 |
本計画は、双極性障害をはじめとする気分障害とミトコンドリアDNAヘテロプラスミー変異との関連を検証するために計画された。特に死後脳におけるミトコンドリアDNAヘテロプラスミーを標的とし、分子バーコードを用いて一分子レベルの解像度でヘテロプラスミーを明らかにすることを技術的な主眼とし、バリアントアレル割合の低いヘテロプラスミーも含めて関連を検証する。本年度は、気分障害とミトコンドリアDNAヘテロプラスミーとの関連検証の技術的準備として、分子バーコードを用いたミトコンドリアDNAターゲットエンリッチメントシーケンス・情報解析方法の確立を行った。分子バーコードシーケンスには、Agilent SureSelect XT HS2システムによりduplex molecular barcodeを付加することで、増幅初期のPCRエラーも含めた偽陽性の除外を可能とした。ミトコンドリアDNAプローブを用いたターゲットエンリッチメントとIlluminaショートリードシーケンサーにて深度40万にて超高深度シーケンスを行い、AGeNT, fgbio, BWA, GATKを用いて情報解析を行った。一塩基あたりの理論的エラー率が10e-6未満と考えられる水準で一分子単位のバリアントコールを行い、ミトコンドリアDNAの一塩基あたり変異率が10e-5~10e-6のオーダーであることを確認した。患者10例・対照群11例のパイロットサンプルに対して解析手法を適用したところ、患者群でClinVarに登録されている病原性の高い変異が数%という低いアレル割合で検出され、当初の仮説に支持的な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Agilent SureSelect XT HS2システムを用いたライブラリプレップ・ミトコンドリアDNAプローブを用いたターゲットエンリッチメント・Illuminaショートリードシーケンサーによる超高深度シーケンスの実験的過程を支障なく行うことができた。duplex molecular barcodeから一分子単位でバリアントコールする情報解析過程に一定の困難があったが、様々な検討を行うことで、AGeNT, fgbio, BWA, GATKを用いた情報解析パイプラインを確立した。患者10例・対照群11例のパイロットサンプルに対して40万深度のシーケンスを行い、上記パイプラインを適用することで当初の目的である一分子単位での変位検出の成果を得た。以上から当初の予定通り進捗しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
分子バーコードを付加したライブラリプレップ・ターゲットエンリッチメント・超高深度シーケンシングの実験手法が順調であり、分子バーコードによる一分子単位でのバリアントコールといった情報解析も順調に行っている。パイロットサンプルから更にサンプルを拡張し、死後脳におけるミトコンドリアDNAヘテロプラスミー変異の検出を進めていく。双極性障害死後脳は数が少ないため、国内外のブレインバンクと連携することで、サンプルサイズの拡大に努める。追加死後脳試料に対して、分子バーコードを付加したライブラリプレップ・ターゲットエンリッチメント・超高深度シーケンシング・一分子単位でのバリアントコールを行う。追加試料も含めたデータにて、当初の仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度では、ライブラリプレップ・シーケンス方法・情報解析の条件検討を主眼とし、系の確立を主たる目標とした。情報解析において、一塩基あたりのエラー率10e-6という高い精度でバリアントコールを行う方法を確立するために、一定の時間がかかることになった。計画の進捗が極めて順調であった場合にパイロットサンプルとして多数の検体を処理する可能性を考慮し2022年度でも多めの予算を当初計上していたが、資源の無駄なく計画を進めるためには、上記の条件検討に多くの時間を割くことが全体の効率・成果を高めると判断した。このため、2022年度は少数のパイロットサンプルの検討に留め、多数例への拡張は2023年度の課題とした。2023年度は確立した手法を多数例に展開し、ライブラリプレップ・シーケンス方法・情報解析を行うことで、一分子レベルの解像度でミトコンドリアDNAのヘテロプラスミー変異を検出する。
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