研究課題/領域番号 |
21K15723
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
高橋 雄太 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 室長 (40894225)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脳機能シミュレーター / 機能的結合性 / 高次脳機能 / 脳計算理論 / ゲノム / 人工ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究課題では、大規模バイオバンクデータの脳画像をもとにパラメータを生成することで、個人に対応する脳機能シミュレーターを構築し、この脳機能シミュレーターで観察される仮想的な認知検査のパフォーマンスを調べることで、脳画像指標と高次脳機能の背景にあるメカニズムを探ることを目的としている。昨年度までに、個人ごとの機能的脳結合性を反映させた脳機能シミュレーターを用いて、表情感情認識課題を実施する研究を実施し、自閉スペクトラム症患者集団と、定型発達集団において、シミュレーターの感情認識能力に変化が生じることを示すことに成功した。その一方で、機能的結合性で説明できる効果量には限界があることが考察され、マルチスケールの生物指標情報の統合の重要性が判明した。そこで、今年度は、ゲノム情報をこのモデルに統合することで、機能的結合性情報のみでなく、学習や発達にかかわる遺伝的脆弱性情報をモデルに反映させることに取り組むことを開始した。具体的には、ゲノム情報と脳画像(機能的結合性)から統合的に特徴量を抽出し、それを脳機能シミュレーターのパラメータに反映させるためのモデルアーキテクチャの検討を実施し、プロトタイプとなるモデルの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの研究結果から、脳画像以外に、遺伝的脆弱性を説明するゲノム情報を統合することの重要性が判明し、マルチスケール統合モデルに拡張する必要性が生じ、モデルの再構築に時間を要している。さらに、実施国における制度変更などにより、国際バイオバンクのデータ使用契約に時間を要した。以上により、研究に遅れが生じ、研究費を繰り越している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのモデルを拡張し、ゲノム・機能的脳MRIのマルチスケール生物指標からの特徴量抽出アルゴリズムを実装する。さらに、ハイパーネットワークの開発を進め、個人に対応する脳機能シミュレーターのパラメータ生成アルゴリズムを作成する。その上で、基本動作のシミュレーションを実施する。こうしてできたモデルについて、行動時系列の予測精度や個人間分散の表現力を検証して性能評価する。これらの検討結果を、学会や論文で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までの研究結果から、脳画像以外に、遺伝的脆弱性を説明するゲノム情報を統合することの重要性が判明し、モデルの再構築に取り組んでいること、さらに、国際バイオバンクのデータ使用契約に時間を要したことにより、研究に遅れが生じ、研究費を繰り越している。
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