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2021 年度 実施状況報告書

高齢発症の精神病患者の背景疾患による分類と有効な治療法の検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K15730
研究機関大阪大学

研究代表者

鐘本 英輝  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20838932)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード認知症 / 統合失調症 / 高齢発症精神病
研究実績の概要

本年度は研究計画の初年度として、①後方視的な最遅発性統合失調症様精神病(VLOSLP)患者の調査の実施、②前方視的なVLOSLP患者のリクルートの開始をおこなった。
①について、2014年1月から2021年3月までに当施設に受診し、VLOSLPに該当する患者64例のうち、レビー小体型認知症(DLB)の指標的バイオマーカーを実施していた34例において、バイオマーカーの結果が陽性であった11例(VLOSLP+LB)と陰性であった23例(VLOSLP-LB)の臨床的特徴を比較した。その結果、両軍は臨床的に非常に似た特徴を持ち、脳容積に有意な差がないものの、VLOSLP+LB群ではVLOSLP-LB群に比べ、精神運動速度が遅く、妄想の重症度は低く、幻視の有症率が高いことがわかった。また、両群共に40%以上で幻聴を認めたが、幻視を伴わない幻聴を有する症例のほとんどがVLOSLP-LBであった。本結果について、現在Alzheimer's Research & Therapy誌に投稿し、revisionの段階である。また、この調査過程で、アルツハイマー病(AD)バイオマーカー陽性のVLOSLP症例の貴重な知見に関してFrontiers in Psychiatry誌や各学会の学術集会で症例報告として発表した。以上の結果は、本研究の目的である「認知症の前駆状態であるVLOSLPの特徴の把握」に沿うものである。
②について、令和3年度はリクルートした患者における生化学バイオマーカーを測定や、患者のリクルートおよび評価実施体制の構築をおこなった。その上でVLOSLP患者のリクルートを行い、ベースライン評価を開始した。当初の予定では令和3年度は20例程度の患者をリクルートする予定であったが、18例のリクルートにとどまり、若干の遅れを認めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

後方視的な調査研究については、予定のスケジュールを概ね達成できており、調査結果やそれに伴う副次的な成果についての学会発表、論文投稿(Kanemoto et al. in revision)・出版(Kanemoto et al. Front Psychiatry 2021, Satake et al. Front Psychiatry 2021, Ishimaru et al. Front Psychiatry 2022)を進めることができている。今後も後方視的な調査結果を用いた学会・論文発表を行なっていく予定である。
前方視的な研究については、本研究遂行に必要な生化学バイオマーカーを測定する体制や、患者のリクルート及び評価方法の確立を行うことができた。一方で令和3年度には症状を呈しているVLOSLP患者10例、過去に当施設でVLOSLPと診断し、薬物療法により寛解後のVLOSLP患者4例、過去に当施設でVLOSLPと診断し認知症にコンバートした患者4例をリクルートし、ベースライン評価を実施した。当初(予定では3年間で60例)よりリクルートペースが若干遅れている。COVID-19流行の影響を受け、患者の受診控えや連携施設からの紹介の減少による受診患者の減少が、リクルートペースの遅延に影響していると考えられる。

今後の研究の推進方策

後方視的に収集したデータを用いて、今後も学会発表及び論文投稿を行う予定である。
前方視的研究については、令和3年度に若干遅れていた患者リクルートのペースを上げるため、①本研究の対象となる患者について、関連施設からの紹介を促進するための連携を図る、②当施設のある大阪府吹田市及びその周辺の認知症初期集中支援チームなどと連携し、困難事例の中に含まれる該当患者の受け入れを促進する、などを行う。また、令和3年度にベースライン評価を行った患者の生化学バイオマーカーの測定を行い、その結果を中間評価として確認する予定である。

次年度使用額が生じた理由

バイオマーカーの測定など、令和3年度予定していた作業の一部を令和4年度に実施することになったため。
COVID-19流行に伴い、国際学会をはじめとする各種学会への旅費が大幅に減ったため。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Case Report: Treatment of Delusions of Theft Based on the Assessment of Photos of Patients' Homes2022

    • 著者名/発表者名
      Ishimaru Daiki、Kanemoto Hideki、Hotta Maki、Nagata Yuma、Satake Yuto、Taomoto Daiki、Ikeda Manabu
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychiatry

      巻: 13 ページ: 825710

    • DOI

      10.3389/fpsyt.2022.825710

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Impact of Behavioral and Psychological Symptoms on Caregiver Burden in Patients With Dementia With Lewy Bodies2021

    • 著者名/発表者名
      Kanemoto Hideki、Sato Shunsuke、Satake Yuto、Koizumi Fuyuki、Taomoto Daiki、Kanda Atsushi、Wada Tamiki、Yoshiyama Kenji、Ikeda Manabu
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychiatry

      巻: 12 ページ: 753864

    • DOI

      10.3389/fpsyt.2021.753864

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Case Report: Usefulness of Biomarkers for Alzheimer's Disease in Two Cases With Very-Late-Onset Schizophrenia-Like Psychosis2021

    • 著者名/発表者名
      Satake Yuto、Kanemoto Hideki、Yoshiyama Kenji、Nakahama Ryoko、Matsunaga Keiko、Shimosegawa Eku、Morihara Takashi、Hashimoto Mamoru、Ikeda Manabu
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychiatry

      巻: 12 ページ: 742659

    • DOI

      10.3389/fpsyt.2021.742659

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 【老年期の幻覚・妄想と神経心理学】老年期発症の幻覚・妄想と変性性認知症2021

    • 著者名/発表者名
      鐘本英輝, 池田学
    • 雑誌名

      老年精神医学雑誌

      巻: 32 ページ: 649-656

  • [学会発表] 高齢発症の精神障害のprodromal DLBとしての知見と課題2021

    • 著者名/発表者名
      鐘本英輝, 池田学
    • 学会等名
      第117回日本精神神経学会学術集会
  • [学会発表] バイオマーカー上アルツハイマー病が示唆された最遅発性統合失調症様精神病の一例 リスペリドンでの薬物加療が奏功したことに注目して2021

    • 著者名/発表者名
      三浦耕人, 鐘本英輝, 佐竹祐人, 宮崎友希, 岩瀬真生, 池田学
    • 学会等名
      第36回日本老年精神医学会
  • [学会発表] 精神疾患を認知症と見誤らないために Psychiatric-onset DLBを中心に2021

    • 著者名/発表者名
      鐘本英輝
    • 学会等名
      第62回日本老年医学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Very-late onset psychosis without dementia as suspected prodromal DLB2021

    • 著者名/発表者名
      Hideki Kanemoto, Yuto Satake, Fuyuki Koizumi, Daiki Taomoto, Takashi Suehiro, Kenji Yoshiyama, Manabu Ikeda
    • 学会等名
      Next Generation DLB
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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