近年、自閉スペクトラム症(ASD)と特定される患者数は増え続けているが、具体的な原因は十分に解明されておらず、根本的な治療法は存在しない。多くの場合は遺伝的な要因が関係していると考えられており、さらに、腸内細菌叢の偏りがASDのリスクとかかわることが報告されている。本研究は、ASDモデルマウスを用いて、網羅的メタゲノム解析や行動実験によりASDに特徴的な腸内細菌叢について明らかにし、ASDの病態解明及び治療法確立の可能性を探索する。 ASDの病態解明のためにASDモデル動物が頻用されており、特に遺伝性知的障害の代表疾患であるFragile X 症候群(FXS)はASD様症状を呈するため、FXSのモデル動物であるFragile X mental retardation protein 1(Fmr1)- knockout(KO)マウスは、ASDモデルマウスとして広く用いられている。しかし、Fmr1-KOマウスに関する腸内細菌叢と症状については研究報告がなく、本研究ではFmr1-KOマウスを用いて上記の課題解決に取り組む。 本年度は、本学動物実験施設の改修工事が長引いたため、モデル動物の交配を通常通り行うことができず、計画通りに実験を進められない期間が生じた。予定よりやや遅れているものの、仔マウスを確保し、ジェノタイピングによって分類したKO群と対象群(野生型)をそれぞれ育成、確保した。また、行動実験の予備試験として、生後8日目の仔マウスの超音波発声(Ultra-Sonic Vocalization: USV)の測定、及び生後12週目のスリーチャンバーテストを実施し、仔マウスのASD様行動の評価を進めた。
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