統合失調症は陽性症状、陰性症状および認知機能障害によって定義される深刻な精神疾患であるが、現在認知機能障害に対する承認された治療薬は無く、革新的な治療法の開発が求められている。本研究は、統合失調症と因果関係の明確なマウスモデルDf(16)A^+/-を使用して、統合失調症の認知機能障害に関する病的神経回路形成の分子メカニズムを解明し、新規治療法の開発に向けた知見を創出することを目的としている。 【研究計画Aについて】Df(16)A^+/-のシナプス数と分布、プロテオームを定量化するシナプトームマップを作製するために、Psd95^EGFP/+:Sap102^mKO2/Y:Df(16)A^+/-(オス)マウスの作製を進めている。Psd95^EGFP/EGFP:Sap102^mKO2/mKO2(メス)のダブルホモノックインマウスの作製が完了し、これをDf(16)A^+/-マウス(オス)と交配させ、目的のマウス作製し、実験に十分な数のコロニーを増やしている。 【研究計画Bについて】病的神経回路形成の分子基盤を解明するために、異なる発達段階におけるbulkRNA-Seqを行い、各ステージで複数の異なる遺伝子が変動していることを見出した。また、当初計画していたChIP-Seqの代わりに、より精度が高く多くの情報を得られるmulti-CUT&Tagによる解析を試みており、マウス前頭前野細胞を用いたプロトコル開発を進め、シーケンスをかける前段階のライブラリー作製までのプロトコルの最適化が完了した。
|