研究課題
本研究のために開発した視線認知課題を用いて、2022年3月までに自閉スペクトラム症(ASD)群10名、定型発達(TD)群11名の被検者に対して、視線認知課題施行中のMEG測定を行った。同時に、MEG測定で得た磁場情報と脳構造情報とを突き合わせて逆再構成処理を行い電位情報を得るために必要な、物理的脳構造情報をMRI測定により得た。またASD群、TD群すべての被検者に対し、WAISによる知能指数の算出、AQによるASD重症度(TD群においてはASD傾向の強さ)の評価、なども可及的に行った。これらのデータを解析したところ、Gaze条件(視線で指示された方向を見る条件)の刺激提示後200 msにおいて、ASD群では中後頭回が反応しているのに対しTD群では下側頭回が反応しており、両群間に有意な差を認めた。中後頭回はV2領域であり、V1領域での視覚情報を処理し、物体の形状や位置などを検出する。下側頭回は物体の色や形を認識し、顔の認識にも関わるとされる。このため、TD被検者は提示された人の顔を顔として認識できているのに対し、ASD患者は単なる物体の形として認識している可能性が示唆された。また、TD群の刺激提示後200 msにおけるArrow条件(矢印で指示された方向を見る条件)とGaze条件の反応を比べると、ともに側頭極が反応しているが、Arrow条件では中側頭回が、Gaze条件では下側頭回が反応していた。先行研究でも、下側頭溝(STS)領域が視線認知に関わっていると指摘されているが、我々の研究では空間分解能がさらに上がり、Arrow条件では中側頭回の、Gaze条件では下側頭回の反応を捉えた。Arrow条件では提示された顔の視線が動いてないのに対してGaze条件では視線が動いており、下側頭回でこの情報を処理している可能性が考えられた。今後、これらの所見を論文化していく。
2: おおむね順調に進展している
2021年度にはASD群10名程度、TD群10名程度の被検者の測定を行う予定となっていたため、おおむね順調に進展している。
ここまでの結果を一度論文化し、次の展開として新たな視線認知課題を開発する予定。
概ね予定通りに研究費を執行した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
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