申請者らは有棘赤血球舞踏病(ChAc)の病因遺伝子産物であるchoreinの機能解析を進めており、これまでにchoreinを強制発現させた細胞ではchoreinがα-tubulinとヒストン脱アセチル化酵素(HDAC6)と相互作用し、オートファジーを促進して飢餓誘発性細胞死に対して抑制的に働くことを報告した。今回申請者は、ChAcモデルマウス脳と野生型マウス脳を比較することにより神経系におけるオートファジー機構とchoreinの関係を明らかにし、他の精神疾患の病態解明への足掛かりにしたい。 現在のところ野生型マウスとChAcモデルマウスの脳組織において、オートファジー関連タンパク質の発現について検討したが、有意な差が得られたタンパク質が同定できていない。免疫沈降反応においては、オートファジー関連タンパク質であり、アクチンフィラメント上で働いているmyosinVIと相互作用している、あるタンパク質と相互作用していることが確認できた。そのタンパク質はIP3Rを介した細胞内カルシウムイオン制御に関わっていることが知られており、HEK293細胞においてVPS13A-KD細胞との比較では細胞内に流入するカルシウムイオン濃度がKD細胞において高くなることが確認できた。これまでの当研究室の研究でChAcにおける神経細胞死は、鉄依存性細胞死であるフェロトーシスが関わっている可能性が示唆されているが、鉄だけでなくカルシウムの動態にも異常がみられていることがわかった。また、飢餓条件下のKD細胞は、脂肪滴のオートファジーがWTに比べて減少しており、新規に取り込んだ脂肪酸が既存の脂肪滴に取り込まれるまでの時間が遷延していることが確認された。これらをマウス脳組織においても確認し、神経系におけるオートファジー機構とchoreinとの関係を明らかにしていきたい。
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