研究課題/領域番号 |
21K15747
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
阿部 紀絵 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (90880071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / MMP-9 / 早期診断 |
研究実績の概要 |
最近の知見や、他の研究者との情報交換などから、MMP-9が認知症の病態促進に寄与するプロセスを明らかにするうえで、①性差と②血液脳関門の障害が重要な因子である可能性が示されている。 ①性差: MMP-9のアルツハイマー病の病態促進効果は女性において高い可能性が示唆されている。申請者は、上記傾向の背景に、女性ホルモンや筋肉量、脂質代謝などが関与しているのではないかとの仮説を立て、アルツハイマー病の被験者を男女別に分け、エストロゲンやクレアチニン、BMI、コレステロール、中性脂肪などを独立変数に組み込み、MMP-9の変化量や海馬体積、認知機能への経時的な影響について解析を継続している。しかし、現段階では、女性ホルモンや筋肉量・脂質のマーカーと、MMP-9を介したアルツハイマー病の促進との有意な関連を示す結果は得られていない。しかし、アルツハイマー病は高齢女性に多い疾患であり、同疾患の発症や経過、予後について「性差」という観点から明らかにするうえでも、MMP-9がkeyになる可能性があり、引き続き検討を続けていく価値がある課題と考えている。 ②血液脳関門の障害: 生活習慣病が認知症の病態を促進する機序としては、脳内におけるインスリン作用不全が血液脳関門を障害し、それによって、循環血液中の炎症性メディエーターが中枢神経に侵入、あるいは、脳内のクリアランスが低下し、神経炎症、神経変性が引き起こされるという流れが想定されている。MMP-9は、MCI患者の海馬周辺の血液脳関門の障害との関連が報告されている。「生活習慣病→血液脳関門の障害→神経炎症/異常蛋白の蓄積→神経変性」という生活習慣病としての認知症の病態進展のメカニズムを解明するkey factorとしてもMMP-9に注目し、解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請者の異動により、前向きコホート研究の実施が困難になったため、ADNIデータベースを用いた研究に絞って研究を継続している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
①性差、②血液脳関門の障害、③生活習慣病に着目し、患者の層別化をより詳細に行い、MMP-9が認知症の病態促進に寄与するプロセスを明らかにするための解析を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の異動により、当初計画していた前向きコホート研究の実施が困難になったため、検体の検査費用や検体の輸送費などが未使用となった。 また、参加を予定していた国内外の学会が、オンライン開催となったため、旅費が不要となった。 次年度は、主に、学会発表、論文の投稿などに経費を使用することを計画している。
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