研究課題/領域番号 |
21K15760
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中野 智成 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80885517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 転移性脳腫瘍 / 放射線治療 / 健康関連QOL / 認知機能 / 定位照射 |
研究実績の概要 |
脳転移放射線治療後の認知機能の予測指標を確立させるために以下の2つの軸で研究を進めている。 ①既存の全脳照射後の認知機能のデータを使用し解析 2021年度は照射後1年までのデータについて解析を実施。照射前後の認知機能検査各項目において標準線量群(30グレイ/10分割~35グレイ/14分割)と減量群(25グレイ/10分割)に分け解析をしたが、照射後1年の時点では線量低下の恩恵は明らかにできなかった。しかし、減量群の方が食欲低下や皮膚症状の有害事象が少なく、健康関連QOLの低下が軽度に抑えられる可能性が示唆された。(脳転移全脳照射における処方線量の違いが認知機能及びHR-QOLに与える影響;本田、中野、日本放射線腫瘍学会第34回学術大会)。 ②比較的新しい治療法の前向き観察研究にて認知機能に関わるデータの蓄積 海馬回避全脳照射の実施及び前向き観察研究の立案を検討したが、保険適応上実施困難と判断した。代替案として、多発脳転移に対するSingle-isocenter volumetric modulated arc therapy(直線加速器にて複数個所の病変を同時に定位放射線照射を行うことができる新規治療法)による治療後の認知機能データを蓄積することとした。SI-VMATの導入にあたり、回転誤差による影響を検証した(Nakano H, et al: Maximum distance in single-isocenter technique of stereotactic radiosurgery with rotational error using margin-based analysis. Radiol Phys Technol. 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①本年の途中まで一緒に研究を行っていた研究協力者の辞退もあり、全脳照射後の認知機能のデータ整理・解析に多少の遅れが生じているため。 ②強度変調放射線治療である海馬回避全脳照射の実施を模索したが、脳転移に対する強度変調放射線治療は保険適応上実施困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の計画は以下の通りである。 ①脳転移全脳照射後3年までの認知機能検査結果についてまとめ、認知機能予測に関する因子を同定するために解析を行い、論文投稿を目指す。 ②1)脳転移術後の術後腔定位照射、2)当初予定していた海馬回避全脳照射は保険適応上実施困難であるため、多発脳転移に対するSingle-isocenter volumetric modulated arc therapy(複数個所の病変に同時に定位放射線照射を行うことができる新規治療法)について認知機能検査を実施するための前向き観察研究を立ち上げ、症例の集積を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で当初現地参加予定であった学会がWeb開催となり、旅費の支出を抑えられたため。2022年度も感染拡大防止の観点から、特に国外の学術大会の参加が困難であることが予想されるため、主に研究解析および英語論文を執筆するために必要な書籍やソフトウェアの購入、または英語論文に係る校正費および掲載費等に充てる。
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