研究課題
大動脈解離/大動脈瘤(解離性を含む)症例を蓄積し、4D-flow MRIを撮像/解析したところ、複雑な流れが生じる状況下(特に血管内腔が広狭不整となる部分)で計測流量が流体法則(質量保存則)を満たさない場合を少なからず経験した。流体力学的には説明が難しい結果であったため、4D-flow MRIによる計測エラーを疑い、流体ファントム(直管モデルと大動脈瘤モデル)と脈流ポンプを用いて定常流および非定常流(心拍出モデル)を再現し、流量計での測定値と4D-flow MRIでの解析結果との一致性を検証した。その結果、特に大動脈瘤モデルにおいて4D-flow MRIの計測エラーが実証され、撮像パラメータ(velocity encoding, VENC)に依存してその程度が大きく変化した。従来のパラメータ調整(VENCを含む)ではこの問題を完全に解消することができず、臨床研究を進めるうえでさらなる基礎検証を行う必要性が示唆された。4D-flow MRIの計測エラーに関するこれまでの結果については現在、共同研究者と論文執筆中である。以上の基礎検証と並行して、大動脈解離(ULP型を含む)症例の臨床経過と血流解析結果(4D-flow MRIや流体シミュレーション、血管造影)とを対比することで、血行力学的な予後因子の探索/検証を行った。その結果、大動脈解離の偽腔に作用するずり応力(wall shear stress, WSS)が予後因子の候補である可能性が見いだされた。現時点では症例報告レベルだが、その結果について国内外の学会で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
特に流体ファントムを用いた4D-flow MRIの基礎検証が順調に進んでおり、計測エラーが生じる状況を特定できつつある。並行して、大動脈解離の症例を蓄積して血流解析(4D-flow MRIや流体シミュレーション)を行い、血行力学的な予後因子の探索/検証を進めることができている。
4D-flow MRIによる計測エラーの問題を検証することが最優先と考えている。撮像パラメータやポンプ流量、造影剤濃度を適宜調節してファントム実験を繰り返し、原因の究明および解決法の提案を目指す(解決できない場合は計測エラーが生じる条件を同定する)。以上の基礎検証が一段落したところで、実際の症例データの解析に重点化して取り組んでいく。
コロナ禍において学会/研究会の出張旅費がかからなかったため、次年度以降の旅費として残しておいた。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いて現地参加できるようになりしだい、出張旅費等に利用していく予定である。
すべて 2021
すべて 学会発表 (3件)