前年度に施行した4名の膵癌患者でのPET試験では、膵癌への[11C]MeLeuへの集積がやや亢進している可能性が示唆された。組み入れ患者数が不十分であるため、膵癌患者での[11C]MeLeu PETを引き続き行う予定であったが、研究代表者都合(海外移住)のため、本研究課題は中止となった。 研究期間全体の成果は下記の通りである。 令和3年度:健常男性被験者6名で[11C]MeLeu PETのfirst in human試験を行った。被験者6名の全身推定被ばく線量は平均で4.17±0.21 μSv/MBq、臨床投与量である185-370 MBq投与時の実効線量として0.77-1.54 mSv程度と計測された。同時に撮像する低線量CTの被ばく線量が5mSv程度であり、全体として10mSvを下回ると想定される。これは診療で使用するダイナミックCTと比べて少ない線量である。また、正常膵への集積は投与20分後でSUVmean=2.4-2.5程度と低かった。 令和4年度:膵癌患者での[11C]MeLeu PETを行った。研究には5名者が参加し、うち1名では製剤の適格合成ができなかったため除外となった。試験を遂行できた4名では、膵癌へのMeLeu集積がSUVmax=3.33±0.85(範囲;2.07-3.88)の集積が見られた。FDGに比し[11C]MeLeuの膵癌への集積は低い傾向であったが、4名中3名では化学療法が先行して行われており、治療による修飾が否定できない。一方、FDGで強い集積が見られた胆管 ステント周囲の集積や骨粗鬆症性圧迫骨折などへの偽陽性病変に対する集積は[11C]MeLeuではほとんど見られなかった。 [11C]MeLeuを投与した6名の健常者、4名の患者全員において、有害事象は発生していない。
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