本研究はクレアチン分子を対象とした化学交換飽和移動イメージング法 (Creatin chemical exchange saturation transfer : CrCEST)の精巣機能評価における有用性を明らかにすることを目的とした。精巣虚血モデルならびに男性不妊モデル(抗癌剤投与モデル・放射線照射モデル)を対象とし、CrCEST法による精巣での Cr分子イメージングを行い、その有用性を検証した。 精巣動脈結紮による精巣虚血モデルにおいて、虚血精巣でCrCEST信号が進行性に低下すること、CrCEST信号の低下と虚血時間が強い相関関係を持つことを明らかにした。抗癌剤を用いた男性不妊モデルにおいても、抗癌剤投与によってCrCEST信号が低下すること、CrCEST信号の低下と造精能の指標であるJohnsenスコア が相関関係を持つことを明らかにした。放射線照射による男性不妊モデルにおいても、放射線照射精巣でCrCEST信号が進行性に低下すること、CrCEST信号の低下 とJohnsenスコアが相関関係を持つことを明らかにした。更に鉛板による遮蔽効果を利用して作製した放射線局所照射モデルの精巣をCrCEST法で評価したところ、同一精巣内で部位毎に異なる残存造精能を可視化することに成功した。精巣虚血モデルと放射線照射による男性不妊モデルでの結果をまとめた原著論文を JMRIにて発表した。また、抗癌剤による男性不妊モデルの結果をまとめた原著論文をMagn Reson Med Sci.にて発表した。本研究で、CrCEST法の精巣機能評価における有用性を検証し、精巣 機能イメージングの前臨床コンセプトを確立したため、今後はヒトを対象とした精巣CrCEST研究を進めていく。
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