研究実績の概要 |
最終年度では2021,2022年度に最適化した中性子フィルターとコリメータ面積を広げた新しい中性子コリメータ(延長コリメータ)を組み合わせて線量計算を行った。2021年度の課題であった照射時間がこの延長コリメータと組み合わせることで照射時間を短くすることに成功した。この研究成果を日本・台湾BNCT研究会(台湾開催)で発表をした。 本研究の成果を取りまとめて、住友重機械工業株式会社と相談し、今後、この開発したフィルターを医療機器申請の手続きを進める予定である。 研究期間全体を通じて実施した研究成果としては: 2021年度に行った実験結果をまとめて米国医学物理学術誌に論文投稿した(https://doi.org/10.1002/mp.15864)。本論文の内容としてはBNCT用加速器型中性子源の平均エネルギーを上げるためのフィルターの開発をモンテカルロシミュレーション計算を行い最適な形状を決定した。シミュレーション上では、このフィルターを使用することにより、深部の線量を20%程度向上できることが明らかになった。 2022年度には前年度に決定した中性子フィルターの実現可能のため、中性子の強度を上げる必要があり、コリメータ形状の最適化をモンテカルロシミュレーションを用いて検討を行った。新しいコリメータ(延長コリメータ)を開発して、中性子の強度を2倍程度増やすことに成功し、この成果をNatureのScientific Reports誌に投稿して論文が採択された(2022年8月:https://doi.org/10.1038/s41598-022-17974-7)。 本研究を実施することにより、BNCTを受ける患者の体位設定シミュレーションが楽になり、照射時間が短くなり、治療を受ける患者の負担が大幅に減った。
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