研究課題/領域番号 |
21K15795
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
谷 幸太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (40736071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内部被ばく / 核医学 / 体内動態モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、放射性核種であるTc-99mで標識した合成糖たん白(Tc-99m-GSA)による肝シンチグラフィを例として、患者ごとに異なる放射性薬剤の代謝を考慮した内部被ばく線量の評価手法を確立することを目的としている。本年度は、以下の内容について実施した。 (1)Tc-99m-GSAによる肝シンチグラフィの対象となった肝がん患者について、ガンマカメラ(Siemens E.cam Signature Series)による心臓及び上腹部を含むダイナミック撮影で得られた医用画像を解析した。ダイナミック撮影は、Tc-99m-GSA(平均218.9 MBq)の投与直後から30秒/フレームで約30分間にわたって実施されており、得られた画像に含まれる肝臓及び心臓に対して設定した関心領域における計数率の変化を明らかにした。 (2)血液中に投与されたTc-99m-GSAが体内で減衰・排泄されるまでの体内動態を予測するために、血液、肝臓、膀胱、消化管を含むコンパートメントモデルを構築した。膀胱から尿中への排泄速度、消化管から便中への排泄速度については、国際放射線防護委員会の刊行物を参照して決定し、各コンパートメントにおける放射能の時間変化を連立微分方程式として記述した。 今後、個人の肝機能や代謝による影響が大きいと考えられる血液及び肝臓に関連する移行係数について、臨床画像の解析結果に基づいて患者ごとに最適化して決定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Tc-99m-GSA投与後の肝シンチグラフィに関する画像解析及びTc-99m-GSAの体内動態モデルの構築を予定どおり実施したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点について研究を進める。 (1)本研究で対象としている肝がん患者について、ダイナミック撮影の直後に実施した全身撮影から心臓及び肝臓への放射能の残留量を評価し、ダイナミック撮影におけるガンマカメラの計数率と放射能の関係を明らかにする。 (2)個人の肝機能や代謝に依存する「血液→肝臓」「肝臓→血液」等の移行速度を患者ごとに最適化し、臨床で観察された肝臓及び心臓の放射能の変化を再現する。 (3)最適化した移行速度に基づき、体内動態モデルの各コンパートメントにおける放射能の時間変化を表す連立微分方程式を数値的に解析し、体内のTc-99mが排泄又は減衰によって消失するまでの各臓器・組織での崩壊数を評価し、内部被ばく線量を計算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値解析ソフトウェアの基本構成の導入にあたり残額が生じた。残額は、次年度の助成金と合わせて、必要な機能のアップグレードのために使用する予定である。
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