研究課題/領域番号 |
21K15804
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村 真之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40895322)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スクリーニング / 化合物ライブラリ / 放射線誘導がん免疫応答 |
研究実績の概要 |
HTS(high throughput screening)プラットフォームを構築し、放射線誘導免疫応答を評価しました。PARP阻害剤を陽性対照、副腎皮質ステロイドを陰性対照として、検証を行いました。結果として、放射線単独と比較して、免疫応答の活性化または抑制が確認され、実験プラットフォームの妥当性が確認されました。 このHTSプラットフォームを使用して、FDAが承認した薬剤のほぼ全て(2595化合物)をスクリーニングし、放射線誘導がん免疫応答への影響を定量化・カタログ化しました。さらに、薬剤併用によって引き起こされる免疫応答の変化メカニズムをトランスクリプトーム解析で解明しました。 薬剤スクリーニングの結果、19%の薬剤で放射線単独と比較して免疫応答が活性化し、15%では免疫応答が半分以下に抑制されました。抗がん剤については、その作用機序によって免疫応答の活性化または抑制の傾向が異なりました。特に肺がんの同時化学放射線療法に使用される薬剤に着目すると、微小管脱重合阻害剤、白金製剤、トポイソメラーゼ阻害剤は免疫応答を活性化または維持し、ピリミジン代謝拮抗剤、微小管重合阻害剤、副腎皮質ホルモン剤は免疫応答を半分以下に抑制しました。RNA seqでのGene enrichment analysisにより、これらの放射線誘導免疫応答が主にType Iインターフェロン応答によるものであることが確認されました。 この研究内容については、2021年の欧州放射線腫瘍学会(ESTRO 2021)のPoster Discussionで発表しました。また、学術雑誌に投稿し、掲載されました。 その後、本研究で評価した免疫応答が周囲の免疫細胞の活性化を引き起こすかどうかを検証するために、ヒト末梢血単核細胞のmigration assayを実施しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に計画していたFDA承認薬ライブラリの検証に関する結果を得ることができ、さらに学会発表や学術誌の掲載に至っています。これらの進展から、全体として順調に進行していると判断しています。しかし、一方で、この基礎研究結果と臨床試験結果との相関性の確認はまだ十分でないため、今後の課題として取り組む必要があります。
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今後の研究の推進方策 |
次に取り組む課題として、キナーゼ阻害剤ライブラリを用いて放射線誘導免疫応答を評価し、免疫を増強または抑制する主要なpathwayを特定し、新しい治療法の開発につなげます。また、東京大学創薬機構ライブラリ(企業と提携して作成されたオーファンドラッグや新規化合物を含む40万化合物のライブラリ)を利用して、放射線誘導免疫応答を増強または抑制する化合物をスクリーニングし、新しいターゲットの発見を目指します。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会参加ができなかったため、旅費として計上していた一部が次年度使用額となりました、 試薬代(QUANTI-Luc Gold:invitrogen、細胞培養、タンパク質実験、核酸抽出)、データ解析用PC代、研究成果発表用の交通費等、英文校閲費用、論文掲載費用などに使用する予定です。
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