研究実績の概要 |
LPAを担癌マウスに投与すると、腫瘍内にある異常血管の血管透過性を制御し、薬剤到達性を高めることが確認されている。通常の薬剤だけでなく、投与抗体の到達も改善させ、免疫抗体療法への応用も確認されている。このLPAによる腫瘍微小環境の改善は、腫瘍の放射線感受性を高めることが期待される。また、 照射線量や照射回数の低減につながれば、放射線による副作用の低減につながると考えられる。マウスに肺がん細胞株であるLLCを皮下移植し、腫瘍サイズが5mmを超える頃からLPAを腹腔内に投与し、同時期にX線照射を行い、腫瘍サイズを経時的に観察した。 初回の実験の条件は1回あたりのX線照射量を4Gyとし、移植day7とday14に照射を行った。LPAはday7,10,14,17に投与。2回目の実験ではday7,14にX線(4Gy)照射し、LPAの投与を放射線照射を行う前日であるday6, day13を含めたday6,7,13,14に行った。1回目、2回目の結果では、control群とRT群の腫瘍サイズに優位な違いがなく、照射線量(4Gy)が少ないと判断した。また、LPAによる放射線治療増強効果は確認できなかった。そのため、3回目は1回照射線量を6Gyに変更する方針とした。LPAをday6,7,13,14に投与し、X線(6Gy/fr)をday7,14に照射した。照射単独群での腫瘍増大抑制効果を確認したが、LPAとの相乗効果は見られなかった。4回目はLPA投与量の増量(9mg/kg)を行い、同様の実験を行ったが、優位な差は出ていない。 LPAによる腫瘍血管正常化作用は皮下腫瘍モデルだけではなく、脳腫瘍モデルでも確認されているため、GL261というマウスグリオーマ細胞株をマウス脳内に移植し、脳腫瘍モデルでの検討を計画している。
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