研究課題
内視鏡によって膀胱腫瘍を切除した場合、CT画像上で視覚的に残存している腫瘍の範囲を特定することが困難である。近年の人工知能技術の進歩により臓器全体の輪郭を自動抽出することは可能となってきたが、切除後に平坦になった病変部の自動描出は実現していない。本研究は変形レジストレーションを用いることで画像上特定困難な病変範囲の教師データを作成し、それを用いて学習させた人工知能のセグメンテーションで病変を高速かつ高精度に自動描出する技術を開発することが目的である。令和4年度は、機械学習に用いる教師データを生成するための変形レジストレーションの精度評価および最適な手法の検討を行った。まず腫瘍切除後のCT画像で、膀胱壁に挿入した金属マーカーを指標として腫瘍の存在範囲の輪郭を作成しておき、その輪郭をゴールドスタンダードとする。次に腫瘍切除前のCT画像上で腫瘍の存在する膀胱壁の範囲(輪郭)を設定し、腫瘍切除後のCT画像に変形レジストレーションする。その際に腫瘍切除前のCT画像上の輪郭も同様に変形されて腫瘍切除後のCT画像上に反映される。ゴールドスタンダードの輪郭と変形レジストレーションして反映された輪郭の一致度を評価指標とし、指標が最も高くなるよう変形レジストレーションの手法や設定パラメータ調整を試みた。変形レジストレーションには主に3つのモードがあり、1つ目は2つのCT画像の画素値を元に変形するもの、2つ目は2つのCT画像上にそれぞれ作成した輪郭を元に変形するもの、3つ目は前二者を組み合わせたハイブリッドモードである。その結果、モードとしてはハイブリッドモードが最も一致度が高く、平均80%程度の一致率が得られた。特に男性では前立腺と膀胱の接触部分を固定してレジストレーションさせることで一致率が平均87%となり、精度の向上が見込まれた。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度の研究により、変形レジストレーションによって従来のゴールドスタンダード(すなわち膀胱壁に金属マーカーを留置して腫瘍の存在範囲を設定する手法)に近い精度で金属マーカーの留置無しに腫瘍の存在範囲を設定できることが示唆された。今後は変形レジストレーションを用いて金属マーカーを留置していない症例の画像も用いて教師データを作成することが可能な見込みであり、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
人工知能の学習・評価に用いる症例を確定し、研究に用いるための倫理審査手続きを進める。症例の選定については北海道大学病院泌尿器科とも連携する。倫理審査完了後、変形レジストレーションを用いて画像のラベル付けを行い教師データを作成する。人工知能の構築に関して、学内の人工知能研究者との連携を図る。
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Radiation Oncology
巻: 18 ページ: -
10.1186/s13014-023-02218-3